藤井監督は学生時代、映画サークルに所属し映画ばかり作っていたいう。
僕も学生時代は映画研究会に所属し、8mmで映画を撮っていた。
その時の一本に「死んではみたけれど」という15分程度のしょうもない作品がある。
自殺した大学生が死後の世界で現実と交錯し、結果的に自殺は愚かで現実に戻る話。
とってもチープな内容だが、本作を観た時に当時の作品を思い出した。

本作はNetflixのオリジナルドラマで、
この世から旅立った人々から残された人々への思いを描いている。
いわば死後の世界と現実を繋いでいる。

僕の作品と遠くて近い。
先月も「青春18×2 君へと続く道」で書いたが藤井監督は好きな監督の一人。
勝手だが本作でより身近に感じてしまった(笑)。
僕の想像力や発想力との圧倒的な違いは理解しているが・・・。
すいません、どうでもいい話で。

多少のネタバレは許されるだろう。
災害により亡くなった母親役の長澤まさみが息子の無事を祈り、
あちらの世界から探し求めるストーリー。
リリーフランキーや坂口健太郎など未練を残して世を去った人たちとの交流を描く。

その中から人間の温かさや無常さ、生きていることの価値を理解していく。
もっと危うい世界を描く作品かと想像していたが、気持ちが優しくなれる作品。
藤井監督はクールとホットを上手く使い分けできる稀有な存在かもしれない。
いずれにせよ人の心の内を表現するのが上手い監督だ。

そして、感じたのは映画への愛。
「青春18×2 君へと続く道」では映画へのリスペクトを感じたが、本作はさらに愛を感じた。
リリーフランキー演じるマイケルは元映画プロデューサー。
自らも自伝的な映画を撮っている。
それを死後の世界で完成させ、その世界で観てもらおうと
奔走するが、それがまさに映画への愛。

藤井監督の映画好きがいくつかのシーンでくみ取ることができる。
好きな作品の傾向も・・・。
それだけでも十分楽しめた作品。

そして、主役の長澤まさみだな。
7歳の子供の母親の35歳を演じているが、とても魅力的。
誰かが好きになるのも仕方がない。
彼女は冷たさと温かさを両方演じきれる。

ちょっとすき間時間があるのなら、観てもらいたい。
僕は「余命10年」も観てみるかな。