学級崩壊や先生の過酷な労働環境など教育現場が話題になることは多い。
それは日本特有の問題だと思っていた。
実際は日本に限ったことではなく、全世界共通の問題。
本作を観て、そう感じた。

舞台はドイツの中学校。
仕事熱心で正義感の強い若手教師の行動が引き金になり、大きな問題へと発展。
その流れていく状況がとても恐ろしい。
社会派人間ドラマだがサスペンススリラーというジャンルも間違いではない。
むしろそう捉える方が正解なのかもしれない。

原題は「Das Lehrerzimmer」。
大学時代、ドイツ語の授業は受けていたが、「グーテンターク」しか覚えていない。
調べてみると「職員室」という日本語訳。
邦題は「ありふれた教室」。

このかけ離れたタイトルは何なのか。
映画を観ると違和感はなくなる。
いや、若干、違和感は残る。
本当にありふれているのかと・・・。
原題も英語でのタイトルもストレート。

まさにそこで起きた出来事。
何が正しく、何が間違っているのか、考えさせられる。
誰の行動も間違ってはいない。
理屈で考えれば常識的。

しかし、感情が入るとそれは一気に乱れる。
正しさが悪意と受け取られる。
それがとても恐ろしい。

本作を観て、昨年公開された「怪物」を思い出した。
小学校内の事件を取り上げているが、立場により受け止め方は異なる。
それに近い面はあるが、本作の場合、若手教師ばかりが追い込まれる。

いやいや、そもそも校長や先輩教師の対応が悪いでしょ…
と客観的に判断するが、実際はそうではない。
世の中はきっとそう。

教育現場だけでなく、企業でも地域コミュニティでも起きうる話。
日本だろうとドイツだろうと関係ない。

そして、映画は答えを出してくれない。
ラストシーンの受け止め方は人によって大きく変わる。
カギとなるルービックキューブの存在も・・・。

本作でドイツの学校の在り方も理解できたのはよかった。
先生同士の議論に生徒が加わるとか、
あくまでも答えは自分で出させるとか、
多くの人種が通う多様性とか、学ぶ点も多かった。

しかし、どんな国でも学校の先生は大変。
そして真面目すぎる性格は損をする。
ある程度、テキトーな方が問題は起きない。

真面目すぎる性格を直したいと今更ながら思った。
な~んて・・・。

後味はいいとはいえないが、作品は素晴らしい。
落ち込むことを覚悟して、是非、観てほしい。