やはり本作を観ながら「ハウス・オブ・グッチ」を思い出してしまった。
それは主役がアダム・ドライバーだからではない。
イタリアの街並みが「ハウス・オブ・グッチ」とダブったのだ。
歴史ある建物は時代が移ろうとも残す印象は変わらない。

それにしてもアダム・ドライバーは凄い。
本作ではフェラーリの創業者エンツォ・フェラーリを演じ、
一方ではグッチ経営者のマウリツィオ・グッチ。
似ても似つかない。
中年太りの体格とスラッとした紳士。
クリスチャン・ベール並みの役作り。
いやいや凄い。

クリスチャン・ベールといえば「フォードvsフェラーリ」
4年前の作品だが、痺れた作品だった。
クリスチャン・ベールはフォード側のドライバー役を演じていた。

舞台は1966年。
経営難のフェラーリを買収しようとしたフォードが物語の発端。
本作の舞台は約10年前の1957年。
この時もフェラーリは破産寸前。
ずっと経営危機なわけね・・・。

それは両作品のエンツォ・フェラーリを見れば理解できる。
経営者というよりはエンジニアでかつドライバー。
レースに勝つことが第一優先。
車の売れ行きは二の次。
だからこの尖がったマニアしか乗らない車を生産できるのだろう。

「フォードvsフェラーリ」で製作総指揮を執り本作では監督のマイケルマンは
フェラーリをリスペクトしているのか、嫌っているのか。
どうでもいいことを思ってしまう。
と本作とは関係のないことをツラツラと書いてしまった。
映画は車業界の歴史も教えてくれますね(笑)。

実話を基にした作品はより僕の気持ちを揺り動かしてくれる。
デッドヒートを繰り広げショッキングなシーンにもグラグラくるが、
経営者として何を拠りどころし、それを大切にすること。
自分を信じて貫き通してブレない生き様もそう。

このこだわりがなければ名声や名品を残すことはできない。
部外者からみれば迷惑な堅物が歴史に名を刻むことになる。
彼よりバランスのいい人やマネジメントに優れた人は山ほどいるが、太刀打ちはできない。

創業者の持つ圧倒的なパワーはファミリービジネスの強さでもあり問題点でもあるが・・・。
見方を変えれば、本作もファミリービジネスを描いた作品。
エンディングロールまで辿り着くとそう感じさせてくれる。

アダム・ドライバーもよかったが、僕が惹かれたのは奥さん役のペネロペ・クルス。
若い頃のシーンはわずかだが、その変貌ぶりには驚かされる。
環境が人の表情や性格も変えてしまうのかもしれない。
気をつけないと・・・。

個人的には楽しめた作品。
次回、友人のフェラーリに乗せてもらう時はより感謝したいね。