韓国映画は実話をベースにした作品が多い。
映画化できるような大きな事件が頻繁に起こる国ともいえる。
実話を基にした日本映画に物足りなさを感じるのは製作側の問題ではなく、日本が平和である証。
どっちの国に住みたいかといえば、やはり日本。

本作は「粛軍クーデター」「12.12軍事反乱」と呼ばれる韓国民主主義の存亡を揺るがした事件がベース。
いわゆるファクションだが、ほぼ現実に近いようだ。
この事件の前には「KCIA 南山の部長たち」であり、事件後は「タクシー運転手 約束は海を越えて」
次から次への世の中を驚かす事件が起きる。

真正面から描けば国を非難することになる。
それを恐れず向かう姿は賞賛すべき。
日本ならきっと忖度が生じるだろうし。

エンドロールから本作の登場人物が誰を指すかは一目瞭然。
僕でさえもヤツが彼なんだと理解できる。
ネタバレしないように名前は伏せるが、それが判明した時は「う~む」と唸る。
実際の大統領だし・・・。

本作が描くのは1979年12月の数日間。
民主化を目指す韓国で新たな独裁者を狙う陸軍司令官がクーデターを起こす。
それを守ろうとする首都警備司令官との攻防がスリリングに描かれる。
どちらが正義でどちらが悪かはいうまでもない。
しかし、悪からすれば自分たちが正義。

これがフィクションなら最後は正義が勝利しハッピーエンドという流れ。
事実は簡単ではない。
理想通り進むことは少ない。
正しさが通用しないのが現実なのかもしれない。
それを観るだけでも十分な価値はあるし、歴史を学ぶことは可能。

もう一つ僕が感じたのはリーダーの在り方。
リーダーの判断やリーダーシップの発揮の仕方で勝負の明暗は分かれる。
そしていつも邪魔するのは自己保身に走るリーダー。
大局的な見方はできず、自分の立場や権力を中心に判断を下す。
ヒエラルキーがある以上、従わざるを得ない。

そんな点ではクーデターを起こした司令官チョン・ドゥグァンに軍配が上がる。
独裁的だが人の掌握術には長け、いざという時には迷わず突き進む。
その存在感に圧倒される。

役者は誰かと思っていたらファン・ジョンミン。
一昨年「人質 韓国トップスター誘拐事件」「ただ悪より救いたまえ」を鑑賞したが、
同じ俳優とは思えない。
役作りに要した時間は相当で、実在する本人も相当研究したのだろう。
正義の味方が正統派すぎて、余計にそんなことを感じたのかもしれない。

本作は韓国では1300万人以上の観客動員を記録した大ヒット作という。
4人に1人は観たというから相当なもの。
本作から反面教師的に学ぶ若者が多いと喜ばしい。
それは日本でも同じだけど。