第二次世界大戦を描く映画は多い。
国内だけに目を向けると敗戦国で多くの方が亡くなった悲惨な戦争として描かれる。
どうしても自分たちが中心でそれが世界と勘違いしがち。

当たり前だが戦争の被害は全世界。
敵も味方もない。
敗戦国でも戦勝国でも多くの人が不幸に陥る。
大半は一般市民で直接戦争に関わっていない人ばかり。
余計に悲しくなる。

事実を知ることで戦争や紛争が収まればいいが、その気配がないのが現実。
この類の作品に触れる度にどこかの大統領や首相は映画を観るべきだと思う。

本作は1945年、第二次世界大戦のドイツによる占領末期のデンマークが舞台。
実話がベースだという。
占領下といってもドイツの敗戦は濃厚。
デンマークにドイツからの難民が押し寄せたことで事件が起きる。

一人の少年の目線でドラマは進むが、その揺れ動く気持ちや姿勢が戦争の悲惨さを伝える。
教育された環境でいえばドイツは敵。
親が敵国の病人を救おうとしても態度は変わらない。

しかし、あることがキッカケに気持ちは揺れ始める。
人本来が持つ優しさかもしれないし、かすかな恋愛感情かもしれない。
子供らしさ=人間らしさ。

自分の立場や恨みを正当化する大人との違いをまざまざと見せつけられる。
当たり前の行動をした父親も権力には逆らえない。
自分の意志を曲げて尽くさなければならない。
素直な子供の感情を親は理解し受け入れる。

本当の正しさは何なのか。
僕らは少年の行動から教えてもらう。
シンプルにいえばそんな作品。

作品は少年セアンを演じたラッセ・ピーター・ラーセンに尽きる。
微妙に変化していく自分の感情を見事に演じていた。
もっとわざとらしい演技ならここまで感情移入はなかった。

本作はデンマーク作品。
いくつかの国との合作は何度も観ているが、単独の映画は数少ない。
「アナザーラウンド」以来。
過去観た合作「青いカフタンの仕立て屋」「ある人質 生還までの398日」もインパクトは強かった。
いい映画を製作する国なんだね。

他国から戦争の悲惨さを学ぶことも大切。
感動的な人間ドラマだが、その事実を知れたのは良かった。