最近、「ぼくが~」で始まる映画が多い。
この1ヶ月でも「ぼくの家族と祖国の戦争」と「ぼくのお日さま」を鑑賞。
なぜ、漢字ではなく平仮名なのか。
柔らかい雰囲気を出すためか、ただの偶然か。
僕はブログではぼくでもボクでもなく僕だけどね。
それはどうでもいいか(笑)。
本作は評価が高いことと呉美保監督作品が気になり観ることに。
エンドロールで主人公と原作者が同じ名前と知り、最後の最後で実話だと認識。
確かにフィクションにはないグッと迫るものがあった。
耳のきこえない両親と耳の聞こえる息子の愛情を描いた作品。
耳が聞こえない親から耳が聞こえる子供が生まれるのはいわゆるコーダ。
コーダといえば「コーダ あいのうた」。
素晴らしい映画だった。
その流れでいえば2年前の「ケイコ 目を澄ませて」もステキな映画。
特別な観方はしていないが、気持ちは揺り動かされる。
本作もかなり気持ちが揺れ動いた。
当事者でもその立場でもないが、親の気持ちも息子の気持ちもよく分かる。
だから辛いと感じるし、愛おしくもなる。
母親明子は両親の反対を押し切り結婚し、また反対を押し切って子供を産む。
注ぐ愛情は強いが、なんせ耳が聞こえない。
赤ちゃんが泣く声も何かに触れる音も聞こえない。
危険な状態は毎日続く。
それでも周りの協力があり、子供は育つ。
耳の聞こえる息子大は両親の愛情を理解しながらも、自分の存在にコンプレックを感じる。
そして母親に辛く当たってしまう。
幼少の頃から手話を覚え母親と接せる姿をみれば優しい息子なのは百も承知。
そんな自分が許せず、一方で親から離れたいという気持ちで東京へ。
距離を置くことで視野は広がる。
息子大は吉沢亮。
葛藤する表情も優しい目も死んだ目もよかった。
大の少年時代の子役が吉沢亮に似ていると思ったのは僕だけか。
そして母親明子役の忍足亜希子が本当に良かった。
実際、ろう者の俳優。
息子を見つめる表情が美しくも悲しくも切なくもなる。
すべては母親としての愛情表現。
何も聞こえない静かなシーンで涙が出る。
もし僕がコーダだったら、大よりも優しくできるだろうか。
もっと愚かな態度で接するかも。
うむ・・・。
ふたつの世界を生きるのは簡単じゃない。
間接的だがその世界に触れられたことを感謝したい。