これまたヤバい映画が公開された。
アメリカ映画を尊敬する点は現役の大統領の生き様を容赦なく制作するところ。
それも賞賛や忖度ではなく、やや辛辣に描く。
これがでっち上げであれば公開禁止に拍車が掛かるが、事実ベースだから仕方ない。
実際にトランプ大統領は上映阻止を試みたようだがストップできなかった。
正式に大統領に就任したこれからはわからない。
フェイクだといって訴訟問題になったりするかも。
ただ話題性のある問題作なのは間違いない。
事実、こうしてトランプ氏が創られた過程には納得。
本作の延長線上に今の姿があるのは想像にたやすい。
20代のトランプが敏腕弁護士に鍛えられ徐々に変化していく。
30代から40代へと向かい、自信をつけ傲慢な態度になる。
少しずつ今に近づく姿は本人に近い。
トランプ役のセバスチャン・スタンの演技力だが本当にトランプに似ている。
体格や表情もそうだが、歩き方やゼスチャーも本人のよう。
毎日のようにニュースを見ているのでそれくらいは分かる。
しかし、本作の情報の出どころ、すなわち伝記はどこから集めたのか。
トランプ夫婦しか知らない、
もしくは本人しか知らないことも多い。
こんなことやあんなことは本人が暴露しない限り闇に葬られる。
フィクションも多いと思うが、本人をイメージさせる巧みな演出。
観る者は絶対、あんなことはやってるな・・・と思ってしまう。
改めてトランプ氏の成り上がり方には感心。
奥さんも親も兄弟も関係ない。
自分が正しいと思えば突き進むだけ。
敏腕弁護士ロイ・コーンが教えた「勝つための3つのルール」には忠実。
「攻撃、攻撃、攻撃」
「非を絶対に認めるな」
「勝利を主張し続けろ」
3つのルールは体の中に沁み込んで今でも忠実に守っていると思える。
そう考えるとすごく恐ろしい。
映画で完結するのなら健全だが、その延長線上に今や未来があると思うと体が震える。
とはいえ、調子づくトランプ氏を見て武者震いをする支持者もいると思う。
アメリカで本作はコケたようなのでそんな支持者は少ないかもしれないが。
70年代、80年代の描き方も上手く個人的には十分に楽しめた。
ただ本作の評価は今ではなく、10年後に出るのではないか。
傑作なのか、駄作なのか。
この数年である程度は評価はできるだろう。
ノーベル平和賞をもらう可能性もゼロではないし。