室町時代中期はイメージがしずらい。
鎌倉から南北朝、室町に移る時代や戦国時代は歴史上の人物が跋扈し、
それを描く作品は多いが中期はさほどでもない。

応仁の乱は11年続いていたがインパクトに欠けるし、
銀閣寺の足利義政を知っていてもその功績は知らない。
230年続いた時代だが、あまり興味はそそられない。
幕府の傲慢で無策ぶりをみると当然という思いもあるが、僕の知識が乏しいだけかも。

そんな中での本作。
当初、フィクションかと思ったが、そうではない。
大泉洋演じる蓮田兵衛は実在する人物。
本作で初めて知った。

いつの時代もその時代を象徴する人物は存在する。
蓮田兵衛はまさにそんな人物。
大袈裟に描くことで史実と異なるだろうが、その分、輝きを放つ。
町が廃れ人々が疫病や飢饉で苦しんでいる姿がより対比となる。

それにしてもこんなに町が汚いとは・・・。
煌びやかなのは京の都のごく一部。
使う者と使われる者、楽をする者と苦しむ者。
この時代の悲劇。
これが事実だとその出来事から想像する。
だからこそ歴史書に一度しか名前が出ないヒーローが生まれるんだ。

本作の予告編を最初に観た時、歴史を描くコメディと予想した。
大泉洋の主演がそう思わせた。
全く違う硬派なドラマ。
これほど殺陣が見事だとは思いもよらなかった。

そういえば「探偵はBARにいる」なんてハードボイルドな作品もあった。
気がつけば日本を代表するエンターティナーになっていたんだ。
いやいや、尊敬します。

そして、入江悠監督。
僕の中では「あんのこと」にインパクトが強すぎ、社会を抉る作品が得意な監督と思っていた。
それだけではない。
娯楽要素の強い作品も実に上手い。
器用な監督なんだね。
剣が宙を舞い鍛え上げる才蔵のシーンや一揆のシーンのカメラワークなど迫力も十分。
今江監督もこれから日本を背負う映画監督になっていくのか。

時代劇の面白さを改めて感じた作品。
さて、次はどんな時代劇を見せてくれるのかな。