昨年、「燈火(ネオン)は消えず」を観た時、香港映画は終焉を迎えたと思った。
多くの規制で勢いはなくなり面白い作品はもう作れないと勝手に感じていた。
完全な杞憂。
いろんな事情を抱えるのは事実だろう。
しかし、面白い映画はいくらでも作れる。
それも香港映画に魅了された世代が再び喜びそうな作品。
本作はまさにそう。
香港映画として歴代No.1の動員を達成したのも納得できる。
韓国映画、中国映画、香港映画は日本映画にとって脅威な存在。
そんなくらいがちょうどいい。
描かれるのは1980年代に入ったばかりの香港。
時代の変わり目といっていい。
実際、暗躍していたかどうかは知らないが黒社会が九龍城砦で覇権争いを行う。
その争いがハンパない。
どうだろう、映画の1/4くらいは人と人の争い。
ちゃちな武器は使わない。
肉体同士のぶつかり合い。
ジャッキーチェンが若ければこの場に参戦しただろうが、
時代が進むと戦い方、いや撮り方も進化する。
その目まぐるしい動きに観る側はついていくのがやっと。
「犯罪都市 PUNISHMENT」や「JAWAN ジャワーン」も驚く。
あれだけ戦っても死なないのがヒーローなのか・・・。
とはいえ、本作に正義は登場しない。
師弟関係や男同士の友情になんとなく引っ張られるが、
どいつもこいつも悪い奴らであるのは間違いない。
最も悪い奴がとんでもないので正義の味方と錯覚するだけ。
覇権争いをする親分子分の中心の場所が九龍城碧。
1993年に九龍城碧は取り壊されたが、今でも実在すると思うほどの見事な作り。
なんと約10億円を掛けてセットを作ったという。
それだけでも話題だが、大ヒットしないと監督やプロデューサーは泣くに泣けない。
香港映画の意地かもしれない。
政治的な要素は一切ないが、作り手が表現したいことはなんとなく伝わる。
それは日本人でも感じたり・・・。
本作の大ボス役はあのサモ・ハン・キンポー。
今はサモ・ハンとだけ呼ぶみたい。
かつての香港映画のブームを支えてきた一人。
体格に似合わず俊敏な動きは昔と同じ。
本作でも圧倒的に強い大ボスを演じていた。
痛快でキレキレな香港らしいアクション映画。
十分、満足させてもらった。