an1561

一年すれば50歳という年齢のせいもあるのだろうか。
涙腺が緩んでしまって、仕方ない(苦笑)。
しっとりと涙してしまった。
本来、泣くシーンではないかもしれない。
樹木希林さん演ずる徳江さんが「楽しかった~。」としみじみ言うセリフに思わず涙してしまった。

過激な演出があるわけではない。
映画を盛り上げるようなイヤらしいシーンは省かれている。
(エッチなシーンのことではありません)
無理やり感動させようとか、涙を流させようというシーンが省かれ、
かなり抑えた演出になっていると思う。
それがこの映画の魅力ではないだろうか。

河瀬直美監督は玄人好みの監督だろう。
国内の評価よりも海外での評価の方が高く、商業的にはイマイチ。
日本映画ファンでの知名度はあったとしても、一般的には知られた存在とは言い難い。
中日ドラゴンズでいえば藤井みたいなものだ。
(この例えはかなり出来が悪いな・・・笑)

僕はカンヌ映画祭の新人賞を受賞した「萌の朱雀」さえ観ていないと思う。
ほとんど記憶がない。
なんとも情けないが、気持ちがあまり乗らなかったのが理由。

しかし、本作品はファーストシーンからグッと引き寄せられた。
美しい桜も印象的。
控え目な登場人物が控え目な演技をしながら、物語は淡々と進む。
粒あんを作る場面は、その香りがこちらまで届きそうなくらい湯気も立ち込めていた。
長瀬氏は相当練習しただろうと思われる生地作り。
その一つ一つのシーンが美しく描かれていた。
そして、何よりも良かったのが樹木希林さんの演技。
その姿に感動した人も多いだろう。

映画のカギとなる噂が噂を呼ぶシーンはひとつもない。
それが原因かと思わせるだけ。
しかし、そこに恐ろしさである。
それはこの映画の恐ろしさというよりも日常の恐ろしさ。
社会的な問題はあるにせよ、何気ない一言が相手を傷つけ、二度と立ち直れない状況へと追い込む。
この映画に限らず、平凡な毎日の中で自分たちが意識をしなければならないことでもある。
それを気づかせてくれる日本映画は娯楽性だけでない社会的意義がある。
(あれっ、変なこと言おうとしてるのか・・・)

満足感に浸っているが、僕はこの映画にお金を払っていない。
TV局の方に招待券を頂いたのだ。本作はメ~テレが製作に関わっている。
ローカル局が映画の製作するのは珍しいと思うが、こういった作品を提供するなんて素敵じゃないか。
改めて、ありがとうございました。