2025年アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞受賞作品。
偶然だが受賞した当日に鑑賞。
その割には映画館は空いていた。
翌日からだろうね(笑)。
本作が受賞したのは大きな意味があるかもしれない。

僕らが普段目にするニュースは表面的がほとんど。
その出来事を間接的に端的に報道する。
パレスチナとイスラエルの問題も戦争の悲惨さは伝わるものの、
あくまでも外部からの視点。

当事者がどんな状況なのか、
ひとつの村や家族がどんな状態なのかは分かりにくい。
それはマスコミを責めているのではなくやむを得ないこと。
だからこそドキュメンタリー映画の訴求力が必要。

本作は今の戦争が起きる少し前を描く。
2019年から2023年10月までの4年間の記録。
それもパレスチナ人青年と彼の活動を支えるイスラエル人青年の友情を描きながら。

僕らが無責任にこの問題を語ることはできない。
イスラエルを一方的に責めるのも間違っているだろう。
「セプテンバー5」を観れば明らかにパレスチナが悪いと映るし。

国と国との争いごとを簡単に非難するのは無知を認めているようなもの。
但し、置かれた状況から多くを感じ取ることは必要だし、
そこに関わる人の悲劇を理解することも必要。

敵対する両国だが、全ていがみ合っているわけではない。
パレスチナ人バーセルもイスラエル人ジャーナリストのユバルも互いに認め合い解決を目指す。
それが本来人間の持つ真の姿のように思える。

バーゼルは本作ではイスラエルを相手にカメラを回し続ける監督でもある。
ユバルも共同監督で名を連ねる。
映し出される映像は時に目を背けたくなる痛ましい場面は多い。
衝撃も大きい。

本作は時系列にパレスチナ人居住地区マサーフェル・ヤッタの変わりゆく街を映すが過度な演出は皆無。
ナレーションが入ることもない。
必死で撮り続けた映像を編集し流すだけ。
その方が戦争の悲惨さがより伝わるのかもしれない。

アカデミー賞授賞式はバーゼル監督、ユバル監督の並ぶ写真が印象的。
平和を望みながらの笑顔。
多くの人がこの作品に触れることになればいい。