いじめ問題はいつの時代になってもなくなることはない。
それは日本に限ったことではなく全世界でいえること。
本作はベルギー映画。
過去、他国との合作は観ているが一国での制作は初めてじゃないだろうか。

お国事情というよりは子供の置かれた環境。
日本やベルギーが特別ではなくきっと万国共通。
だから普遍的なテーマで扱われる。

本作についても目新しさはない。
どこかで見た風景ではある。
しかし、なぜか深く僕の心に刺さってきた。
それは客観的な視点ではなく、7歳の少女の視点で描かれているからだろうか。

目線は小さな子供の範囲。
大きな視野で物事を見ることはない。
せいぜい半径5メートルの世界。
映し出しカメラは低い位置でほぼアップ。
時折遠い風景を映すがはっきりとは見えない。
ぼやけている。
子供の目が見えないということではなく、子供が見れる世界は限られている。
だからこそ少女ノラが抱く不安や寂しさ、大人への恐怖がヒシヒシと伝わる。

時に子供は残酷だ。
人を傷つける気もない正直な言葉に人は傷つく。
気づくのは本人だけ。
悪意がない分、寂しく辛さを感じる。

普通の生活と普通じゃない生活。
何も変わることはないが受け止め方によって普通が普通でなくなる。
大人になればやり過ごすことができるが子供はそうはいかない。
感情が揺れ動き、違う方向に影響を及ぼす。

ここまで書いたところで映画の内容は理解できないだろう。
まあ、いつものことだしそれでいい(笑)。

本作は72分と映画としては短い。
繰り広げられる世界もほぼ小学校内。
校庭か教室か。

とても小さな世界だが7歳の少女からすれば大きな世界。
ほぼアップが続く巧みな演出により小さな世界が不安を与える大きな世界になる。
ローラ・ワンデル監督の力量だろう。

それにまして引き込むのが主役ノラを演じたマヤ・バンダービーク。
7歳の少女の葛藤を見事に演じる。
とても演技とは思えない。
ここ近年の子役では断トツじゃないかな。
そんなことを感じた。

本作はカンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞。
とはいえそれは2021年。
国内でもっと早く公開されてもいいと思うが・・・。

7歳のノラはもう11歳。
今、どんな生活を送っているのだろうか。
笑顔で健やかに学校に通っててほしい。