不思議な映画だ。
一体ジャンルは何になるんだろう。
めったに観ることのないHPを確認すると、
「魂を撃ち抜く、全く新しいミュージカル・エンターテイメント」
なんて紹介されているが、あまり頷けない。

確かにミュージカルといえばミュージカル。
ただそれはオマケにすぎないような気がする。
そして製作はフランス。
フランスの名匠ジャック・オーディアール監督作だがフランス映画っぽさはゼロに近い。
舞台はメキシコで言葉はほぼスペイン語。

その点も不思議だ。
多様性や複雑性が謳われる昨今、映画のジャンルも国ももはやどうでもいいのかも。
人の多様性を描く意味では理に適った作品ともいえる。
表現が正しくないか・・・。

簡単にいってしまえば、いかつくて恐ろしい暴力的なメキシコの麻薬王が
性別適合手術を受けて女性となり新たな人生を歩むストーリー。
予告編から何かの企みのために女性になったかと思っていたが、そうではない。

シンプルに心も体も女性になりたかった男性。
少し前なら2020年の「ミッドナイトスワン」とほぼ同じ。
それが裏社会に生きるヤクザな男なのでかなり面倒。

結局のところ、このエミリア・ペレスのわがままな人生を描いただけの映画。
そう表現すると身も蓋もないし叱られる。
本作はアカデミー賞もゴールデングローブ賞もカンヌ国際映画祭にもノミネートされた。

れっきとしたメッセージがあるのだ。
人は生まれ変わっても変われないことがあるし、
忘れようと思っても忘れられないことがある。
悪党が善人になっても、善人が悪党になっても同じ。
気持ち次第で全てを変えてしまう。

僕は自分勝手なヤツだと冷めた目で観ていたが、
(いや、そんなことはない。結構、同情してたかな・・・)
想いに共感した人も多いだろう。

予告編からはサスペンス映画を想像。
ミュージカルの要素はなかった。
あえてそうしたのか。
やはり不思議な作品。

ただインパクトは強く心に残った。
ご覧になってこの不思議さを確かめてもらいたい。