素直に感動できる一冊。
読み終えた時、幸せな気持ちになってきた。
同時に思ったことがある。こんなステキなストーリーをなぜ今頃発売するのか。
もっと以前に書籍になっていてもいいのではないかと・・。
著者のあとがきによると最初は「佐治敬三伝」を書こうと考えていたらしい。
しかし、結果的には作家開高健氏との友情・交流を中心に描くことになったとのこと。
上司部下の関係であるが、お互いを想う友情はこれほど素晴らしいものなのか。
男が男を愛する(変な意味ではない)ことがどういうことかを本書は教えてくれた。
システマチックになりすぎた現代の企業社会では考えにくいが、
こんな関係性があるからこそ、人が会社で働く大きな意味や魅力もあるのだと思う。
本書は500ページ近い大作。
この二人の交わりを中心に描いているが、二人が最初に出会うのは200ページを過ぎた頃。
それまではサントリーの前身、寿屋の歴史が描かれている。
僕は全然知らなかった。
鳥井家と佐治家の繋がり、
サントリーの社名の由来、
松下幸之助との関わり、
名古屋がサントリーには重要な土地であること・・。
本書を読んで初めて知ることが多かった。
サントリー宣伝部の歴史はいろんなところで報道されているので、
開高健氏や山口瞳氏、彼らがどんな活躍をしてきたかは大まかには知っていたけど・・・。
羨ましい時代。
羨ましい時代と築こうとすれば相当数の試練や逆境を越えなければならない。
そうしなければそんな時代を自分たちの手で作ることはできない。
二人の笑顔で酒を飲み交わす写真が印象的ではあるが、
その笑顔の奥にある生き様をほんの少しだけ感じることができた。
表面的に企業を識るだけでは意味がない。
この商品のシェアがどうとか、売上の伸び率がどうとか、
そんなことを知っていても何の意味もなさない。
もっと企業の本質を知らねばならない。
本書はノンフィクションのジャンルになるかとは思うが、最高のビジネス書といえる。
毎日ありがたく飲ませてもらうお酒。
もっと感謝しなければならない。