私が頻繁に東京へ出張するようになったのはいつ頃だっただろうか。
サラリーマン時代に東京へ来る機会はほとんどなく、せいぜい数年に1回程度。
新宿も銀座も区別がつかず、右も左もわからなかった。
東京駅では人波にのまれ右往左往していた。

それが今の立場になってから仕事の機会も頂き、いろんな理由をつけてこの地を訪れている。
決して詳しくなったわけではない。
銀座の人気店に足を運んだわけではない。
何度訪れても慣れることがないのがこの東京といえなくもない。
それでも私を受け入れてくれているような気持ちにもなる。

それならそれで構わない。
本来ある私の目的はなんなのか、自分探しに近い問いを自分に投げかけてみる。
到底答えは見つからない。私にできることと言えば、自分の足で感じ取るだけだ。
つい先日も出張で東京駅を訪れた。

気持ちが昂ってきた。
最近では東京駅の地下街を歩くことは少なくなっていたが、自然と足がそちらに向かった。
初心に帰って東京駅で食事をしよう。
意味もなくそんな考えが頭をよぎった。
地下に降りるとこんな看板が目に飛び込んできた。

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その看板は私をある方向へ導いているようであった。
私は人ごみを抜け足早に「東京ラーメンストリート」なる場所へ移動した。

数ある店舗から私が選択したのは「東京タンメン トナリ」。

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予め知っていたわけでも調べていたわけでもない。
動物的な勘に近いのかもしれない。
そんな大層なことではなく単純に”東京”という言葉に魅かれたにすぎないのかもしれない。
行列ではあったが、とにかく私はその店を選び入ることにした。

ピリ辛タンメン 900円

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東京タンメンなるものの経験がないので、
まずはそのままの状態でスープを飲み麺をすする。
どこかで食べたような懐かしさを感じるが、それがどこなのかは思い出せない。
しばらくした後にピリ辛をおもむろに入れ、
麺と野菜に絡ませながらスープにもなじませていく。
次第にスープは赤褐色に染まっていく。
それは刺激的な味わい。

常識的な人ならまずこのメニューを注文することはない。
コスパが高く人気のあるタンメンとカラアゲのセットを注文するのが正しい選択ともいえる。
しかし、私が望んでいたのは人気でもなく、コスパでもない。
まさに刺激を求めていたのだ。

汗をかきながら、あることに気づいた。
もしかしたら私は刺激を求めるために東京に来ているのかもしれない。

何となくではあるが一つの解が見えてきたような気がした。
東京駅での食事を終え、ちょっとした満足感の余韻に浸りながら目的地に向かった。