書籍を購入する際に選ぶ基準は、好きな作家かどうか、書籍広告のコピー、
知人・友人のおススメ、書店で感覚的に選ぶ、そんなところ。
加えればもう一つ。
毎週に日曜日に掲載されている中日新聞や日経新聞の書評。
こちらも結構参考にしている。
本書は確か中日新聞の書評欄に取り上げられていた。
もし、その紙面を読んでいなければ、この本の存在に気付かなかったし、
購入はしなかっただろう。
元々、スポーツノンフィクションは好きなジャンルである。
最近はめっきりご無沙汰だが、Numberをよく読んでいた頃、その類の書籍を好んで買っていた。
沢木耕太郎氏の影響が強いかと思うが、スポーツノンフィクションの世界にハマった時期があった。
金子達仁、小松成美、戸塚啓あたりも読んでいた。
今でも「中田英寿 鼓動」(小松成美著)は名著だと思う。
息子に読め!読め!と言っても、なかなか読まないけど・・・(苦笑)。
本書もジャンルとしてはスポーツノンフィクションにあたるだろう。
しかし、僕がこれまで読んできた類とは全然異なる。
まずワクワクも興奮もしない。感動もしない。
少しやるせない気持ちになる。これが正直な感想。
こんなことを書いてしまうと読み手のヤル気を失くさせてしまうし、
退屈な書籍と捉えられてしまうだろう。
決してそうではない。
読む価値はある。
無駄に広がった野球の世界を含め、若者の行動特性を含め、学ぶべき点は多い。
スポーツ紙も読まないので実態はサッパリ知らないが、
本書には独立リーグの現状がガッカリするほど克明に書かれている。
それは球団の置かれた環境とその配下にある選手の生き様が描かれている。
こんな世界があるとは想像もしていなかった。
厳密にいえば、想像しようとも思わなかった。
しかし、そこには自らの全てを賭けて戦う選手の姿があった。
こう表現すると聞こえはいいとは思うが、実際のところ、かなり中途半端。
物凄く失礼な言い方になってしまうが(申し訳ありません)、短絡的な行動も多い。
月収3万円でも稼いでいればプロとして認められるのだろうが、自己満足に過ぎない面もある。
国内であろうが海外であろうが関係ない。
そのチャレンジ精神には敬服するが、「努力は裏切らない」とはちょっと異なる。
本書は野球界を取り上げているが、きっとサッカー界でも芸能界でもアートの分野でも
同様のことが言えるだろうし、同じような人たちがどんな世界にもたむろはしているのだろう。
本書では、野球ができる環境を求めて彷徨う人たちを”ノマドリーガー”と呼んでいるが、
そんな人が社会で通用しないかといえば、そうではない。
きちんと自らの方向性と覚悟さえ決めれば、それを受け止めてくれる企業や社会は存在する。
人生の落伍者でもないし、下層社会への転落でもない。
その精神性をうまく生かせば求められる人物像にもなり得る。
そのあたりでは著者の考えとは異なるが、それはあくまでも一般論の話。
著者が間近で見てきた世界の方が説得力はあるだろう。
う~ん、なんだろうな、この切ない感覚。
沢木耕太郎氏の「敗れざる者たち」のちょっと頼りない平成版といったところか・・・。