少なからず業界に関わる者として読んでおいた方がいいと思った1冊。
タイトルから推測すると著者がフジテレビを批判対象として綴ったかにみえるが、
そうではない。
元フジテレビの社員として愛着を込めて、その低迷ぶりを書いている。
そんな意味では客観的な見方というよりは
主観的な見方で書いているとも捉えられる。
フジテレビが辿ってきた70年代から今までの歴史を紐解きながら
栄枯盛衰を表現しているわけだが、それは僕がリアルに接してきた時代。
中学生時代に「8時だョ!全員集合」から「ひょうきん族」へチャンネルを変えたわけだし、
「おニャン子クラブ」も結構見ていた。
入社した頃は「東京ラブストーリー」ら月9のドラマにもはまっていた。
名古屋では東海テレビにあたるわけだが、フジ系の番組を好んで見ていた。
単純に面白かった。
それが本書で書かれているフジテレビの全盛期。
社員が大部屋で一体感を出し、
若手も中堅も自由にその権力に捉われずに番組を作っていた頃。
これはあくまでひとつのテレビ局の話だが、
すべての業界や企業にも当てはまるのではないか。
著者がいうように自分たちを一流と意識した時点で顧客視点はなくなり、
競合にも軽んじた扱いをしてしまう。
最近、報道される大手企業の不祥事も同じようなことが言えるのかもしれない。
内向きな組織になった時点で健全な競争を捨ててしまうのだろう。
誰も意識せずに・・・。
時代背景が理解できるだけに、
この凋落ぶりを他人の事として見るわけにはいかない。
いつ何時、自分たちがそんな立場にならないとも限らない。
業界トップでもないし、
世の中に話題になるような大きなことを手掛けているわけでもないので、
そんな心配はする必要がないかもしれない。
しかし、反面教師として学ぶべき点はある。
会社を一定規模に持っていくことは必要だが、
身の丈以上の規模にしてしまうと悲しい現実が待っている。
それは経営者の器によるので一概には言えないが、
会社が堕ちていく背景には組織が組織として
機能しなくなる規模的な分岐点も存在するのではないだろうか。
本書を読みながらそんな点を感じてしまった。
今後、フジテレビが復活するかはわからない。
しかし、身近なところでいえば、東海テレビでお世話になっている方も多い。
個人的な感情として、このまま停滞してもらうのは困る。
テレビをほとんど見なくなった僕が語るには説得力はないが、そんなふうに思う。
復活する日を祈りたい。