この書籍の存在は地下鉄の中吊広告で知った。
自称沢木ファンを名乗っていても、知らない世界はまだ多いようだ。

2014-11-17 20.07.47

本書は1986年からの一定期間、沢木耕太郎が日記に綴った内容をそのまま一冊の本として発売した。
僕がブログに書いた内容をそのまま発売するのと一緒じゃないか!と思ってはみたものの、
その差は歴然であり(当然です!)、誰も素人の作品なんて読みたくはない。

ただ現代に合わせば、きっとそんなことが言えるはず。
沢木氏がブログを書くとは思えないが、それに近いものがあると感じてしまった。
それは読まれることを前提にした日記であるのは相違ないから・・・。

僕はブログを書き始めるようになって、
30歳から続けている日記がかなりいい加減なものになってきた。
毎日継続しているのはいいものの、
ただでさえ薄っぺらい中味が更に薄っぺらくなっているような気がする。
力の入れ方が違ってきたように思う。

本書は550ページを超える大作(?)。まさに僕の大学時の時代背景。
名作「竜二」の金子正次、川島透あたりはとても懐かしく思える。
偉そうな言い方だが同じようなことを感じていた。
相米慎二監督はバッサリ切り捨てられていたけど・・・。

ここに書かれてる学生が沢木氏に講演依頼を行うエピソードは今年拝聴した講演を思い出してしまった。
(これは今年の中のビッグヒット)
きっと同じような会話が繰り返されたに違いない(笑)。
金銭の額ではなく、その想いや姿勢によって講演先を選ぶあたりは著者らしさでもあるだろう。

それにしても感じるのは一つの作品にかける時間の長さ。
膨大な量を一本の作品に注いでいることがよく理解できる。
要領が悪いといってしまえばそれまでだが、それが沢木氏のこだわりであり、
プロとしての誇りにあたるのだろう。
そう思うとこのブログの存在価値がいかに乏しいか悲しくなってしまう。
(そもそも並列にするのが失礼だ・・・笑)

ここに書かれている沢木氏の日記には頻繁に娘さんが登場する。
これまでの作品では窺い知ることのなかった父親の子煩悩ぶりが手に取るように読み取れる。
今まで全く家庭の香りがしなかったこととは対象的。
家族を大切にする著者の姿が浮かんでくる。

なんだか取り留めのない感想というか書評になってしまったが、
(興味のない人から見れば読む気も失せるだろう・・・苦笑)
沢木氏の日常を垣間見ることができ、
(そうはいっても30年近く前だが・・・)
とても面白かった。