映画コラムニストとして、どう表現していいか、久々に迷う作品。
まあ、自称映画コラムニストだからどんな映評でも責任は取らないんだけれど・・・(笑)。

ポスターには「珠玉のラブストーリー」と書かれているが、
本当にそうなんだろうか。
ラブストーリーに近いけど、僕はそこまで辿り着いていないとも思う。
しかし、それは僕の感性がハンパなく鈍いだけで、
これだけ純愛を描いた作品はないのかもしれない。

その純愛はどこで見出せばいいのか。
夕日を眺めながら発作的に起こるキスシーンなのか、
部屋の窓から射す光と焼ける音なのか、
発する重い言葉なのか、想像力を要する映画。

河瀬監督は僕らに人間としての感受性がどの程度なのか
試しているのではないだろうか。
必要以上に展開される主役のドアップ映像、
それに逆らうような生々しい夕日や砂丘。
実験的要素が強すぎると感じたのは僕だけだろうか。

この映画は最後部の席で観るべき。
最前列だと間違いなく酔ってしまうと思う。
そんな意図はないだろうが、映像とストーリーで頭をクラクラさせる。

それでも映画は美しく純粋で、真っすぐ生きる大切さを教えてくれる。
不安を抱えることが恐怖ではなく希望であること。
堕ちていく先にも確かな未来があること。
映画はそれを悟っているように感じた。
本当かどうかは分からない。

ただ、観客は永瀬正敏くん扮するカメラマンと水崎綾女さん扮する音声ガイドにダブらせてしまう。
この2人の演技は素晴らしい。
同級生の永瀬くんについては今さら言うことはない。
「ションベン・ライダー」なんて懐かしいだけ(笑)。

水崎綾女さんはこの作品で初めて知ったが、
こんな魅力的な女優がまだいるんだと感心してしまった。
あれだけ続くアップの映像もビビることなく、堂々と肌の隅々まで披露していた。
きっとこれから大物になっていく。
もしくはこのままかな・・・(笑)。

こんなふうに映画の感想を書くと褒めているのか、
けなしているのかさっぱり分からないと思う。
基本的には褒めている。

僕は日本映画特有の重さや暗さが好きだ。
TVで観ると眠くなってしまうが、
劇場で観るとヒシヒシと伝わる緊張感が鑑賞後の心地よい疲れを誘う。

スケールの大きさもなければ派手さもないが、
大きなスクリーンでこの類の映画を観ることに意味がある。
どんな意味なんだ?と聞かれると答えには窮してしまうが・・・。

時間のある方は観てください(笑)。