静かに流れていく映画。
ほとんどが寒々しいどんよりとした風景。
主人公のリーは不愛想で喧嘩っ早い。
映画全体を包む悲しげな雰囲気が何か過去を予感させる。
それがひとつの死を機会に紐解かれ、人間模様が表層化していく。
現在と過去が入り混じるシーンの連続。
リーが背負ってきた過去が次第に明らかになる。
なぜリーが喧嘩っ早くて、人に対して一定の距離を持つのか・・・。
段々とリーに対して感情移入していく。
妙に真面目な表現をしてしまったが、そんな映画。
アカデミー賞に6部門ノミネートされたとか、
マット・デイモンがプロデューサーだとか話題性はあるが、
名古屋では地味に公開されている。
テーマが重いせいか、派手な盛り上がりはみえない。
それでいいと思う。
観る観客を選ぶ映画だし、感動どころも人によってマチマチ。
派手な演出があるわけでもなく、悲しいドラマだが泣かせるシーンがあるわけでもない。
静かに静かに映画は流れていく。
そして、静かに映画は終わる。
ラストシーンは「えっ?」と思う人もいるかもしれない。
しかし、これが正しい終わり方できっと日常なんてこんなもんだ。
洋画の場合、超大作に振り回されることが多いが、僕はこんな地味な映画の方が好きだ。
何も考えずエンターテイメント性だけを追求するのもいいが、
映画が終わった後、しみじみ考えるのも悪くない。
父の死を思い出してしまった。
海外の俳優については全然詳しくない。
「あ~、どっかで見たことあるぞ・・・」という程度で名前と顔は一致しない。
本作もそんな感じだったが、一人だけ見覚えある俳優が出演していた。
端役での登場だったが、80年代活躍していたマシュー・ブロデリック。
当時は主役を張る人気俳優だったが、この作品ではちょい役。
随分と丸いオジサンになってしまった。
今、ギラギラした中年役で映画界を引っ張る俳優と比べ、残念だが見劣りする。
歳の取り方は難しい。
変わらないのもダメだが、変わりすぎるのもダメ。
映画の良し悪しとは関係ないがそんなことも感じてしまった。
まあ、いろんな楽しみ方ができるのも映画。
さて、次は何を観るかな・・・。