なんでだろう?と疑問が湧く。
その疑問の解はあるようでない。
鈍感な僕はよく分からない。
繊細な女性なら理解できるのかもしれないし、
その反対で全く理解できないのかもしれない。

何が言いたいのか。
この映画の主役瀧内公美さん演じるみゆきは平日は福島県いわき市の
市役所で働き、土日は東京でデリヘル譲となる。
東日本大震災の心の傷が動機であるのは間違いなさそう。

しかし、なぜそんな危うい仕事を選択するのか、何を求めているのか不明。
金銭目的でないことは理解できる。
腑に落ちないままドラマは進行する。

その表情から憂鬱であることは容易に想像できる。
物憂げな表情を見ているだけで切なくなるし、生きる上での重さを感じる。
しかし、時々、それを覆すとんでもない素敵な笑顔も見せる。
演技にしては自然すぎる笑顔。
その仕事にポジティブさを感じているかのよう。
それが鈍感な僕には分からない。

ただどんどん映画に吸い込まれていく。
光石研さん演じるだらしない父親も柄本時生さん演じる傷を背負う市役所の同僚も
映画の暗さを増長させる。いい演出となっている。

廣木監督は傷の癒えることのない震災の被災者を淡々と描くことによって何かを伝えたいのだろう。
その何かは観る者に委ねられ、監督自身は自ら答えは発しない。
そんな気がしてならない。

こんなことを書いていると映画をおススメしているのか、
面白いのか分からないと思うが、個人的には惹かれる作品。
きっと賛否両論、分かれる映画・・・。

間違いなく大ヒットはしない。
(スイマセン)
一部のファンに支えられ静かに上映期間が終了していく。
「君の名は。」になることはない(笑)。
そんな映画。
でも、それでいいのだろう。
たまには監督の自己満足的な作品があってもいい。

この映画は何といっても主役の瀧内公美さんの表情で持っている。
暗い表情、悲しい表情、ごくたまに見せる屈託のない笑顔。
すべてステキだ。
笑顔は若い頃の田中美佐子さんに似ている。
美しい女性だが、福島にいる時はそんな感じは全く見せない。
そのギャップが逆にいいのかもしれない。

中途半端な状態で映画は終わるが、それはそれで正解。
僕自身はハッピーエンドで終了したと思う。

気がつかなければ過ぎ去ってしまう映画だが、観る機会を得てよかった。