これからも前向きに 名大社会長ブログ

映画「ベルナデット 最強のファーストレディ」

やるな、フランス映画。
映画を観ながらそう感じた。
観終わってからじゃない。
最初の15分でそう感じた。

フランス映画界の奮闘を褒めるべきか、
寛容なフランス政府を褒めるべきか。
それは分からない。
しかし、その臨む姿勢に拍手を送りたい。

本作は冒頭に「事実に基づくフィクションである」と説明される。
普通の映画ならサラっと流れていくが、本作はその説明が再度繰り返される。
その時点で観客は「うむ、何かあるな?」と思う。

事実そうだ。
実在したシラク大統領とベルナデット夫人の大統領就任から退任までを描く。
どこまでが事実でどこまでがフィクションか、遠い国に住む僕は分からない。
本国の人たちは少なからず理解しているかもしれない。
そのやりとりが絶妙でおかしい。

スキャンダルがあったとはいえシラク元大統領は国を支えた優れた政治家。
それが些細な会話や日常的な行動は否定されるように映る。
大真面目に映すのではなく、それをユーモアたっぷりに映す。
フランス人の洒落っ気か。

神経質な人なら政府批判と捉え、上映反対運動をするかもしれない。
幸いシラク元大統領は2019年に死去しているので、とやかく文句を言う人は少ない。
多分。
側近の娘の解釈はどうかは分からないけど。
少なくともベルナテッド側は爽快感を持つ。

登場人物は全て実名。
シラク大統領の後任であるサルコジ氏の描き方なんて、かなり酷い。
本人は健在なはずだが、怒ったりはしないのか。
そのあたりがフランス映画の勇気や力量。
どの視点を中心に描き、周りはどう解釈するかを考える必要はあるだろう。
ただその切り口は素晴らしい。

まず日本映画では考えられない題材。
ここまでえぐってくれたら嬉しいけど。

主演は大女優カトリーヌ・ドヌーブ。
本人とどこまで似ているは分からないが、
ちょっと古めかしいファーストレディはきっとそうだという演技。
脇を固める俳優陣もセンスがいい。

今、ヨーロッパ映画ではフランス作品が一歩先を行くのか。
近年観た作品や本作からフランス映画に魅力を感じる。

今、公開されている別作品も観た方がいいのかな・・・。

酒と人生の一人作法

タイトルを見て躊躇せず購入。
内容を確認するまでもない。
僕が学ばなきゃいけないことが本書に書かれているような気がした。

著者は太田和彦氏。
著者名が後押しことは間違いない。
僕が憧れる大先輩の一人。
とはいえ、どんな経歴なのかはほとんど知らなかった。

全国の酒場を飲み歩き、あれこれ蘊蓄を語る優しいオジサンという程度。
本業は酒飲み作家ではなくデザイナー。
それも新卒で資生堂に入社されキチンとしたキャリアを築かれている。
立場は違えども僕もそれなりのキチンとしたキャリアじゃないか(笑)。
だからこそ本書を読み終え、更に目指すべき人物だと確信。

一人飲みが似合う作家は多い。
伊集院静や沢木耕太郎も憧れる人物。
ただ伊集院静はカッコよすぎる。
沢木耕太郎は爽やかすぎる。
吉田類はTV番組を見る限りグダグダすぎる。
(失礼ですね・・・)

一番近づけそうなのが太田和彦氏。
適度な緩さだが失礼はない。
少し乱れるが大きくは乱れない。
少しも乱れないのかも・・・。

そんな雰囲気は僕も同じ。
「違うだろ!」という輩がいるかもしれないが、本来の僕を知らないだけ。
これも粋な飲み方だとすれば僕もそんな道を辿りたい。

本書はいろんな雑誌に掲載されたエッセイをまとめたもの。
椎名誠並みに軽いエッセイもあれば、比較的固めのエッセイもある。
「酒場で飲む」「酒を味わう」「旅に出る」「古い映画を見る」
「一人を愉しむ」「私の東京物語」と6つの章に分けられる。
やはり内容を確認せずとも問題なかった。

しかし、太田氏がこれほど映画に詳しいとは思わなかった。
昭和30年代、40年代が中心だが、ここでも酒場を絡めたシーンが多く書かれている。
さすが!

既に閉店した酒場もあるが、今も営業を続ける名店も紹介されている。
全国津々浦々だが、時間とお金の余裕ができたら、一人ぶらりと出掛けたい。
人生を賭けた目標にしよう。

本書の解説は元村有希子氏。
僕と同い年のジャーナリストだが、「サンデーモーニング」のイメージが強い。
すこぶるお堅い方かと思っていたが、そうでもなさそう。
太田氏を師と仰ぎ、伏見の「大甚」にも一緒に来ている。
なんだ、見かけのよらないじゃないか。

還暦まで約2年。
60歳を過ぎたら一人飲みの生活を基本に置こうか。

いい学びになりました。

食べ物のはなし 特別編 みそかつ定食

今回も伏見シリーズ300回記念はやってきません。
特別編になります。
懸命にネタを探しているのかもしれません。

定期的に家人と日本酒を購入に出掛けます。
名古屋市西区に豊富に取り揃えている酒屋があり仕入れに出向くのです。
その際には周辺でランチを頂くことが多いです。

今回はその酒屋方面に向かい、たまたまグーグルマップで見つけたお店に入りました。
西区浄心駅近くにある「きよひら」さんです。

選んだ理由は駐車場が広いこと。
この周辺に飲食店は多くありますが、駐車場は限られています。
なぜかこちらは10台以上の駐車場があります。

店内は賑わっています。
そしてメニューを見て驚きます。

普通のうどん屋さんと思っていましたが、うどん以外も沢山。
壁を眺めるとこんな貼り紙もあります。

「お~、そうきたか」
頷きながらオーダーをお願いしました。

みそかつ定食 1110円

ほぼ予想通りの展開。
読者を裏切ることはありません。
サラダにはドレッシングとポテトサラダ。
カットされたミカンもあります。
これ昔ながらの定食という感じで好感が持てます。

みそかつをアップにしましょう。

厚すぎず薄すぎず、ほどよさが伝わります。
確かに「当店自慢のやわらかーい」。
甘めのみそだれもご飯にマッチし、スイスイと食べてしまいます。

家人が注文したのはカツカレーうどん(980円)。
盗み撮りをさせて頂きました。

写真では分かりずらいですが、かなりのボリューム。
カツもしっかりと一人前です。
調べてみるとこちらのカツカレーうどんは有名。
グルメ通はカツカレーうどん一択という話です。
家人の嗅覚に感心しました。

周りではいろんな注文が繰り広げられます。
チャーハンやオムライスもあれば正統派のうどんも。
驚いたのはそば定食(960円)です。

向かいのテーブルの初老男性が頼んでいました。
こちらは天ぷらがセットですが、天ぷらは一人前。
海老2尾もあれば野菜もいくつもお皿にのっています。
「これって天ぷらそば定食じゃない?」
と外野ながらに呟いてしまいました。

いやいや、こちらは魅力的なお店。
次から次へとお客さんが入るのも納得です。
そんなこともあり急きょ、特別編にしました。

みそかつを食べ「お~、100回記念はこれか・・・」と頭の中でランプが灯りました。
ごちそうさまでした。
さて、次回が楽しみですね。

映画「室井慎次 生き続ける者」

いい意味でテレビドラマの映画化だと思った。
前編である「室井慎次 敗れざる者」は上映時間115分。
本作は117分、合わせて232分。
テレビドラマとすれば1回あたり46分で5話分が構成される。

多分、完全無欠な時間構成。
第1回からスタートし5回で終了する流れは本作でも、ほぼ完ぺき。
ドラマの筋書きというか起承転結は分かりやすく観る方を感動させる。

そんな風に思う。
実際、僕が観た映画館でも結構啜り泣きが聞こえた。
主役室井慎次の立ち振る舞いや子供たちの言動に涙した人は多いと思う。
そんな点でもテレビドラマとしては完璧。

もしかしたらそれでいいのかもしれない。
でも、僕は思ったりもする。
本作は一体どこへ向かうのか。
ラストシーンが一つの答えかもしれないし、フジテレビの新たな戦略かもしれない。

その道筋は不明だが観る側はそれを把握した上で臨んだ方がいい。
もっとドラマを解釈してから、本作に向かわないと失礼だと思ったり。
そうではない僕はより客観的に本作を観たので、感じ方は大きく異なった。

前篇を観て、後編である本作は事件の謎を解く物語であると想像。
きっとそんな人は多いだろう。
それも大きく異なる。
厳密にいえば謎は解かれるが、それよりも違う路線が中心。

室井慎次の生き様がより鮮明にあぶり出される。
もしかしたら観る者を裏切るかもしれない。
その逆で期待以上かもしれない。

巧みな予告編により僕らは事件に巻き込まれていく。
松下洸平演じる警察と絡む予告編はインパクトを残すが、実際にはない。
インチキだと思ったが、これも巧みな演出と捉えるべき。
前編の最後に登場した加藤浩次の描き方もいかがかと思ったが、構成上は正解。
あくまでも映画をより成り立たせるための手法。

多分、本作はヒットし今年の話題作になる。
僕は珍しく「本心」と同日に立て続けに観たが、明らかに観客は多かった。

映画を観ながらずっと感じていたこと。
里親出されたタカ役の齋藤潤。
ずっとどこで見たのかと思っていたが、「カラオケ行こ!」の少年役だった。
これから活躍すると思う。

「踊る大捜査線」シリーズはこれからも続くかもしれない。
次は誰にフォーカスするのだろう。
映画を観れば一目瞭然だったり。

映画「本心」

予告編を何度も観てかなり気になっていた作品。
予告編を観なかったとしても多分、観ただろう。

描かれる世界は少し先。
具体的には令和7年からの数年間を描く。
来年の話かと思いながら観たが、実際にはこんな世界にはならないと思う。
しかし、10年先と言われれば分からない。
本当にこんな世界が現実になるかも。

空間が広がる楽しみもあるが、それ以上に恐ろしさも感じる。
それは作品の通り。
知らなくてもいいことまで知るのは楽しみよりも恐ろしさ。
「本心」はまさにそんな作品。

”自由死”を選択し他界した母親にその理由を知りたいために
息子が仮想空間上で母親と交流をするストーリー。
それは予告編でも分かるのでネタバレにはならない。

僕は親子の関係を突き詰める展開かと思ったが、それだけではなかった。
その要素がメインなのは間違いないが、周辺で起きる出来事が近い未来を予感させる。
それは可能性と失望を生む。
「リアル・アバター」とか「VF(バーチャル・フィギュア)」は現実になるかもしれない。
シアワセのために使われるのならプラスの効果だが、必ずマイナス面も表れる。

それは今のSNSと同じ。
使い方次第では不幸に陥ることは多い。
本作はそんなことを俯瞰しているのではないか。

今年観た日本映画では僕の中にかなり突き刺さった。
まさにリアルとバーチャルが交錯。
描かれる世界だけでなく、現実の世界がリアルで映画の世界がバーチャルという意味もある。
それも交錯しているように思えてならない。

最近の石井監督作品はほぼ観ているが、この先どんな作品を撮るのかも興味が湧く。
娯楽作品もあるが、「茜色に焼かれる」「月」のように社会性を露わにする作品が魅力。

そして、原作者の平野啓一郎の頭の中も気になった。
「ある男」「マチネの終わりに」も映画を観て気になったが、本作は更にそう。
小説は一度も読んでいないので、ついにポチッと押してしまった。
今後、ハマったりして・・・。

そして、最後にほぼ同姓同名の名前で出演した三吉彩花。
僕は密かに好きな女優さんだが、彼女のあるシーンで「あっ」と小さな声を上げてしまった。
少し驚いた。
まあ、これは観てのお楽しみ(笑)。

とりとめのない流れになったが、未来を考えるにはいい映画。
近い存在でも「本心」なんて知らない方がいいかもしれない。

食べ物のはなし 番外編 八勝館

伏見シリーズの300回記念はまだ訪れません。
期待するファンがどこまでいるかは不明ですが、簡単にはやってきません。
今回は特別編ではなく番外編。
普段滅多にお邪魔することのない場所をご紹介するのです。

向かったのは名古屋・八事の老舗料亭「八勝館」さんです。

2020年に国の重要文化財に指定された由緒正しき場所。
人気食べ物ブロガーも敷居が高いですが、所属する団体で会合が行われるためお邪魔しました。
この日はどうしても外せない用事があり車でした。

料亭に車で伺う。
本来はあり得ません。
一通りの会合が行われ、会食がスタートします。

まずはビールで乾杯です。
「すいません、ノンアルでお願いします。」
「えっ、山田さん、飲まないの?」
「今日、車なんですよ・・・」
「あら、残念」

本当に残念で、動揺していたせいか先付は撮り忘れました。
こういった料理に合うのは日本酒です。

他の方も僕のところに来て、
「山田さん、どうぞ」
「すいません、車なんですよ~」
「代行呼んで帰ればいいじゃん」
「そうですよね。でも、面倒なので・・・」

後悔が募ります。
しばらくすると八勝館の女将さんが注いでくれます。
「今日、いい日本酒をご用意してるんですよ」
「え~っ、飲みたいなあ~。ああ~、残念」
「車ですか? いいですよ、今日は駐車場に置いてってください」
「えっ、いいんですか」
「特別ですよ」

悪魔の囁きでした。
周りの方も誘惑します。
「山田さん、飲んじゃお、飲んじゃお」
「あっ、そうですね。では、頂きます!」

甘い言葉に意志はいとも簡単に崩れます。
そこからは飲めなかった時間を取り戻さなければなりません。
この日は何種類もの南部美人が用意されていました。

「全部頂きます」
遠慮することなくグビグビと頂きました。
どんな料理にも合います。

〆に近づくころには南部美人を飲み干し、熱燗を飲んでいました。

最後はデザート。

「そういえば今日はビールを飲んでないな。まあ、いいか・・・」
気持ちよく酔い自宅に帰りました。
いい気分はすぐに終わってしまいます。

翌日はいつもより早く家を出て車を八事まで取りに行きました。

八勝館は朝も厳かな構えですね。
ごちそうさまでした。

Z世代の社員マネジメント

正式タイトルは
「Z世代の社員マネジメント 深層心理を捉えて心離れを抑止するメソドロジー」
とかなり長い。

若手社員の育成に悩むマネージャーや経営者向けに書かれた書籍だが、
僕も別の意味で参考にさせてもらった。
まあ、自称Z世代研究家だったりするので(笑)。

そもそも「Z世代」は誰が名付けたのか。
アメリカ発祥で「ジェネレーションX」という表現から流れて、Y、Zときただけ。
日本では芝浦工業大学教授の原田曜平さんが「Z世代」と命名したと言われる。
「~世代」と名付けるのが上手い方で流行語大賞も獲得されている。

先日、その原田さんの講演会が名古屋で開催されたので参加してきた。
「こんなに違う!変化する世代間のキャリアの考え方
~就職氷河期世代からZ世代まで~」
という興味を引くタイトル。

各世代間の特徴を様々な視点から話された。
僕の目的はZ世代ネタを増やすこと。
アウトプットのためのインプット。
ただ他の世代の話で時間が過ぎ、肝心なZ世代ネタは限定的。
それでもいくつかポイントとなる特徴は伺うことができた。
ありがとうございました。

本書とは関係ない内容が続いたが、講演と本書がリンクしている点は多い。
育ってきた環境で作られる価値観は近くなるということ。
とはいえ100人いれば100通りで少しずつ異なる。

本書ではあくまでもマネジメント側が留意すべき点を重きに置く。
僕らはZ世代をひとまとめにする傾向はあるが、それは危険。
ある傾向はある傾向として分けた方がいい。

「個人人格」「組織人格」は新人類と呼ばれた僕らでも使い分けがあるが、
世代によって受け止め方も発し方も違う。
2013年と2023年でもかなり異なる。

何が違うかは本書を読んでもらえばいいが、
100%該当しないにしても世代的特徴として押さえる点ではある。
各世代の特徴や価値観を少なからず学び間違いなく言えるのは、
「最近の若いヤツは~」はいつも面倒くさいということ。

僕が若かった頃、団塊世代や上司にあたる世代は僕らがめんどくさかった。
僕がマネージャーの頃、若いヤツはめんどくさかった。
その後のゆとり世代もめんどくさかった。
Z世代もそれと同じ。

オッサン、オバサンはもちろんのこと、
ちょっと上の先輩でも面倒に感じる面はあるだろう。
若いヤツはそんなものと捉え、否定せず、どう向き合うかが大切なだけ。
若者の特権なんだよね。

結論は信頼関係になるが、その在り方をこちら側がしっかりと考えなきゃいけない。
とかく大袈裟に考えるのではなく、シンプルに捉えた方がいい。
本書を読み、原田さんの講演を聞き、大学で学生らと接し、そんなことを思った。

あまり書評になっていないが、これからも吸収することが大切。
当たり前の話だけど(笑)

映画「アイミタガイ」

本作もご当地映画といっていい。
舞台は近くの三重県桑名市。
僕は近鉄電車で通勤。
主役である梓(黒木華)や恋人の澄人(中村蒼)が乗る電車と同じ名古屋本線。

それだけで親近感が湧く。
かつ、アナウンスで流れる桑名や弥冨は身近な駅。
普段、利用することはないが、いずれも酔って乗り過ごした時に降りた。
自慢するわけではないが、近しい存在なのは理解できるだろう。
どうでもいいか・・・。

本作はてっきり黒木華の泣いた笑ったの人間ドラマと思っていたが、そうではなかった。
いい意味で裏切られた。

僕らは常に「偶然」や「運」、そして「縁」で生きている。
それを大切にすることが自身の生き方にもキャリアにもプラスに働く。
クランボルツ理論は大学の授業でも一番に教えること。
キャリアとは異なるが、本作も「偶然」や「縁」の大切さを教えてくれる。
些細な繋がりが人と人を結び、いいキッカケを与える。
そのキッカケは悲しみを喜びに変える力を持っている。

誰しもが最初に「アイミタガイって何だ?」と疑問が湧く。
僕はおまじないかと思ってしまった。
漢字で書くと「相身互い」。
なんとなく意味が分かる。
そして、映画を観ると明確に意味が分かる。
「相身互い」になればいい循環が回る。

役名を無視して俳優で並べるのであれば、藤間爽子が黒木華を救い、
黒木華は草笛光子を救い、草笛光子は升毅を救い、
升毅は中村蒼を救い、中村蒼は田口トモロヲを救い、
田口トモロヲは松本利夫を救い、松本利夫は西田尚美を救い、
西田尚美は黒木華を救う。

どう?
全く意味は分からないでしょう。
風吹ジュンや安藤玉恵や白鳥玉季も「相身互い」の存在。
まあ、人と人が繋がっていることが理解されればそれでOK。

ちょっとしたシーンで涙を誘うし、ぐっとこみ上げてくるものもある。
日本映画らしい温かい作品、
一年に何本かはこんな作品を観て優しさを保ちたい。

調べてみたら近鉄蟹江駅でもロケをしていた。
こちらは隣駅。
頻繁に乗り過ごす駅。
これだけでも愛着が増す。

もう1回、観てもいい。
それが理由か(笑)

映画「十一人の賊軍」

白石和彌監督は東映のヤクザ映画や時代劇を相当リスペクトしていると思う。
東映のオープニングは70年代の映像じゃないかな。
100%東映らしい作品にあえて仕上げたと感じた。

かつて「十三人の刺客 」という作品があり2010年にもリメイク
浪人たちを集め江戸時代後期の幕府に立ち向かう痛快な時代劇だった。
本作は明治維新の前、戊辰戦争を描く。
一昨年観た「峠 最後のサムライ」と同じ新潟が舞台。

本作が史実かどうかは知らない。
峠のような武士道的な美学はない。
白石監督らしい人間の本性むき出しのグロさが前面に出る。
それが却って好感が持て、賊軍と呼ばれる罪人集団を応援してしまう。

罪人が集められ戦いの始まりから終わりまでぶっ通しの155分。
長さを感じることはない。
舞台となる砦でのほぼ3日間を描くが、その間に多くの人間模様が露わとなる。
その駆け引きやいやらしさ、見せかけの強さや本来のエゴがあぶり出され、感情を動かす。

1対1であり、藩対藩であり、新政府軍対幕府軍。
自分の正義であり、相手にとっては別の正義。
妻を寝取られ新発田藩士を殺害し罪人となった山田孝之演じる政から正義を感じないが、それも正義。
多分、書いていることは伝わらないので、それぞれの正義を映画で確認してもらいたい。

政に殺害される藩士は音尾琢真。
彼は白石作品には欠かせない役者だが、出番は少ない。
あっという間に殺されてしまう。
友情出演でいいんじゃないかな(笑)。
本編に影響を与えないネタバレなので許されるだろう。

唯一、本物の正義があるとすれば、仲野太賀演じる鷲尾兵士郎。
彼の生きざまが本物の武士を感じさせる。
このあたりも往年の時代劇特有の在り方と思うが、潔く気持ちがいい。

仲野大賀は味のある役者とは思っていたが、カッコよさは感じていなかった。
失礼しました・・・。
すこぶるカッコいい。
本作は彼が主役といっても問題はない。
殺陣も決まっていた。
他の賊軍も役割が明確で分かりやすかった。
特に初めて知る役者陣も個性が輝いていた。

そして新発田藩家老の阿部サダヲ。
一番似合うのはコミカルな役柄だが、本作では本音を見せないちょっと不気味な家老。
思い出したのは「死刑にいたる病」
正義を装う曖昧な表情が一致する。
白石監督が好む理由わかった・・・。
そんなことも感じてしまった。

想像以上に斬り合うシーンはグロテスクなので怖気つくかもしれない。
万人受けはしないが「仁義なき戦い」シリーズが好きな人はドはまりする。
果たしてそんな若者はいるか。

こんなハードな作品を白石監督はこれからも撮り続けるのだろう。
個人的にはこれからも期待したい。

映画「ビバ・マエストロ!指揮者ドゥダメルの挑戦」

世の中知らないことが多い。
無知をさらけ出すのは恥ずかしいが、正直な気持ちを表現したい。
時々はドキュメンタリー作品に触れた方がいい。

僕は本作を通して世界的指揮者グスターボ・ドゥダメルという存在を知った。
この分野に関しては知識もセンスも持ち合わせていない。

ドゥダメルが振るう指揮で、彼はダメだししたり褒めたりするが違いは分からない。
同じように素晴らしい演奏に聞こえる。
観客はスタンディングオベーションで大絶賛するが、
それはドゥダメルの指揮による演奏が本当に良かったからだろう。
それだけ魅了された証か。
違いは分からない。

もっと愚かなのは本作で描かれる世界を知らないということ。
ベネズエラが政局不安定な国であるのは理解しているがその程度に留まる。
国内で起きる不幸な出来事までは僕には届いていない。

世の中を大局的にみるのは重要だが、小さな点に気づかなければ本当の不幸は理解できない。
本作ではドゥダメルの活動を通して抉り出す。
政治的な活動を控えてきたドゥダメルだが、ある事件を発端に自分の意思を表明。
それが政府の反発を買い、国内での活動ができなくなる。

自分の身を守るためにその場から離れるメンバーもいるが、当然のこと。
危険にさらされる状況は身の回りでおきる。
そんな中でも諦めない姿勢で情熱的に活動を続けるドゥダメル。

もっとその行動は世の中に知られてもいいと思うが、
(実際は知られているのかも)
この分野に関心がなければ何もなく過ぎ去っていく。
別の業界で、別の国で同じような事象はあるのだろう。

オーケストラによる演奏は明らかに芸術。
ド素人の僕でも凄いな!と感じる。
いい演奏との違いはよく分からないが・・・。

そこに命を懸けて臨む人たちがいる。
夢を追いかける若者がいる。
そんな人を自分たちのエゴで潰してはいけない。
自分勝手な正義で可能性を閉ざしてはいけない。
本作は当たり前なことを一人の指揮者を通して教えてくれる。

もう少しこの分野の理解を深めたい。
そうすればドゥダメルの才能も分かるかもしれない。

時にドキュメンタリーは必要。
それを感じさせてくれた作品だった。