志村けんさんの訃報は、午前中うちの子供から電話がかかってきてそこで初めて知らされた。
なんだかとてもショックだった。
なんて言っていいのか良くわからないけれども、すごく身近な人が突然いなくなってしまうような戸惑いを感じた。
特別僕は志村けんの良いファンと言う訳ではないのだけれども、その日はなんだかとても悲しくなった。
物心ついた頃の記憶では、ドリフターズの8時だよ全員集合は、うちの家では親たちに隠れて上の兄たちとこっそりと見るものだった。
厳格な祖母はこの番組は低俗で、見ると本当に頭が悪くなると思っていた節があり、「カラスの勝手でしょ」と歌うだけでも祖母は顔をしかめたものだ。
ナンセンスなギャグや、大仕掛けの舞台装置、生放送っぽいドタバタ、お約束の歌やダンス、下ネタっぽい笑いなど、子供ながらなんだかとても背徳な?感じで無性に面白かった。
なにより全員集合を見ながら兄たちとゲラゲラ笑いあった時間は、親には内緒の秘密を兄たちと共有している様に感じたものだ。ドリフターズの中でも圧倒的に面白いのは志村けんだと話したが、兄は加藤茶の方が好きだったらしく良く言い合いをしたことを覚えている。
僕の志村けんは、兄たちとのそういう幸せな時間の記憶だ。
やがて兄たちは土曜日の夜は俺たちひょうきん族に乗り換え、僕は全員集合を見たかったけれどチャンネルの主導権はなかったので次第に志村けんを見なくなった。でも僕の中では志村けんは、笑いだったらひょうきん族のビートたけしよりも誰よりも面白い人だと思っていたし、今でもそう思っている。
笑いにもいろんな種類がある。
志村けんの笑いはチャップリンの無声映画お主人公の様に、ある種誰でも知っている変な人が、どこかでいろんな間違いを犯す。その所作が言葉とともに笑いになる。昔の喜劇役者の様なところが魅力だったと思う。
僕にとって懐かしい記憶と結びついたとっても楽しい時間を志村けんさんはテレビを通して与えてくれた。
志村けんさんのご冥福を祈ります。高井でした。