人材紹介事業本部の安田です。
疲れて刺激を欲しくなると、アマゾンや楽天がお勧めしてくれる本の一覧をぼーっと眺めて「なんとなく」で本を買ったりします。
そうでなくとも部屋には積ん読が山積みになっているので、その中からてきとうに読めばいいのですが……
どういうわけか懐かしい本が目に留まり、迷わず購入。
ローワン・ジェイコブセン(2009)『ハチはなぜ大量死したのか』、文藝春秋
表紙の写真を載せようかと思いましたが、ハチのドアップが写っているのでやめておきます……
本棚を見ても、積読を見ても、僕の部屋にある本のほとんどが経済学・安全保障・歴史のいずれかで占められていて、サイエンスはほとんど読みません。
ですが、2009年に出版された同書は非常に話題になったのを、思い出しました。せっかくだし、読んでみよう!
芦田愛菜ちゃんが昨夏に出版した『まなの本棚』で以下のように書いていました。
台本を覚える時や、勉強をする時も、もちろん集中はしているのですが、本を読む時だけはもう別世界。誰かに話しかけられても、声が全然耳に入っていなくて、気がつかないみたいなんです。
本の世界に入り込んでいると、あっという間に時間が経ってしまいます。
芦田愛菜(2019)『まなの本棚』、小学館
まさしくこれで、一気に読んでしまいました。
閑話休題。
普段僕らが食べる食品の8割は多かれ少なかれ花粉媒介者が関わっている(虫や鳥が花粉を媒介して受粉させている)のだそうで、中でもミツバチは組織立って大量の花粉を媒介できる動物とのことで、非常に重宝されているのだとか。
今や我々の文明になくてはならない存在となったミツバチですが、2000年代半ば、北半球のミツバチの1/4が一気に死滅、というか、突然いなくなってしまったというところから事件は幕を開けます。
巣箱には女王バチ、卵、サナギ、そしてたっぷりのハチミツを残して。
この状況はCCD(蜂群崩壊症候群)と名付けられました。
死骸がそこらに転がっているわけではないので、原因究明が難航しました。
原因として様々な仮説が提示されます。
最初に提示されたのは、ハチにとりつくダニ説。ダニに食われるとハチは正常に育たなくなってしまいます。ところが、ダニは正常な巣にも存在し、しかも当時より20年以上前から存在が確認されているため、急増したCCDの原因とは言えません。
その後、電磁波説、遺伝子組み換え作物説、ウィルス説、真菌説、農薬説などが提唱されます。養蜂家の経営状況や心情なども事細かに描かれているため、ページをめくるたびに「今度こそ!原因!わかってくれ!」と期待しますが、そうは問屋が卸しません。結局、行き詰ってしまいました。
しいて言えば農薬については、農薬の製造者は単品での致死量や影響については検証するそうですが、複数種を組み合わせて使った場合や、世代を経て徐々に発現する悪影響についての検証が不十分とのことで、実はハチに何らかの悪影響を及ぼしているんじゃないかということまではわかってきます。
……様々な仮説が検証され、本書の著者が導き出した結論は「すべてが原因」でした。
・特定の花の受粉をさせる(=餌としてその花の蜜と花粉しか与えない)ことにより、栄養バランスが崩れる
・強力な農薬やダニ等の駆除剤がハチに徐々に影響を及ぼす
・ダニ等が薬品に対する耐性を持ち、効かなくなってくる
・アメリカは移動養蜂(季節ごとに異なる作物を受粉させるため、一年中、トラックに乗せられて大陸を縦横無尽に移動させられる)を行うため、移動のストレスや自然に反して冬眠期がほとんどなくなった
などの原因により、世代を経てだんだんと弱くなってきてしまったのではないか。
一つぐらい原因が襲ってきても、元気であれば(蜂にも免疫力や栄養の蓄えがあります)なんとかなるが、長期にわたりあらゆるストレスに晒された結果、徐々に力を失ってきたのではないか、というのです。
筆者の提唱する解決策は、生態系に配慮し、出来る限り蜂をはじめとした生態系に負荷をかけないで農業・養蜂業を営むこと。
生態系は微妙なバランスの上に成り立っており、ある程度の効率性を犠牲にして、ハチにとってストレスの少ない状態に戻してやることが重要なのではないか。
さもないと、近い将来には、受粉がミツバチ頼りになっている農作物すべての生産に困ることにもなりかねない!
最後だけ、東洋チックな、急に解像度が大きな話になったので、科学モノとしてちょっとどうなんだろうかと思いながら。
でも、読み物としてはとても面白かったです。
※ちなみに、最近ミツバチは復活しつつあるそうです。
「ミツバチ謎の大量失踪、懸念弱まる」(サンケイビズ)
良かった良かった。
↑本にはどんどん書き込む派です。考えて、書いて、頭に入れる!
ではまた!