────身近なホームエレクトロニクスから通信、半導体、宇宙関連まで、非常に幅広い事業展開をしていらっしゃる三菱電機さんですが、稲沢製作所では昇降機を手掛けていらっしゃるのですよね。
はい。稲沢製作所は、1964年にエレベーター・エスカレーター専門の製作所として誕生しました。それ以来、エレベーター、エスカレーターの設計・開発・製造、それにビルシステム部門も併せて取り組んでいます。
────では、今日はエレベーター・エスカレーターの業界に絞ってお話を伺いたいと思います。ここ数年での業界の動きはいかがなものですか?
都市化が進み、ビルの背が高くなるにつれ、エレベーターの「高速化」への要望はどんどん強くなっています。そこで、より速いエレベーターを作るための設備投資が継続して行われてきました。当社が担当した横浜ランドマークタワーのエレベーター(分速750m)が93年以降世界最速を保持してきたのですが、2005年に他社が台湾のビルで記録を塗り替え(分速約1000m)、現在それをさらに追い越そうと各社で取り組んでいるところです。
一方、速さだけでなく「安全」であることも重要。いま社会的関心が高まっているのはそこですよね。地震が起こった場合の安全対策はもちろんのこと、普段から乗り手に「速い」と感じさせないくらい、当たり前のように乗れるものにしなければなりません。さらに、いかに効率よく人を運ぶかという点も課題です。
────エスカレーターの場合はどうでしょうか?
乗るとき・降りるときはゆっくり、中間部では速く、というように段階的にスピードを変えたり、最適な角度を考えたりしながら設計をしています。最近では、当社のスパイラルエスカレーターのように、見ること・乗ること自体が楽しいものが多く登場していますね。エスカレーター、エレベーターともに言えることですが、ビルのコンセプトに合わせたデザインで、いまや「魅せるアイテム」としての役割を持つようになっています。
────最近ではミッドランド・スクエアのダブルデッキエレベーターに乗るために、行列ができましたね。
作り手からすると、自分が携わった製品が目に見えて、実際に使っている人たちの反応を聞けるというのは嬉しいものですよ。社会性のある製品を作り、人々の感性に訴えることができるというのは、大きなやりがいですね。
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