経営改善の取組みのひとつとしてよく登場する「QC活動」や「QCサークル」という言葉があります。
QC活動のQCとは「Quality Control」の略。直訳すると「品質管理」ですが、実際の意味はその訳とは微妙に違います。
QC活動とは、それぞれの部署で小グループ(QCサークル)を組み、品質改善に取り組む活動です。特徴的なのは、毎日の通常の仕事を通して、各人が自主的に問題点や改善点を考えていくところです。
あなたも仕事をしていると、「こうすれば間違いも起こらないのに、どうしてこんなやり方なんだろう」「ここが無駄」と不満を抱くことがあるでしょう。QC活動はそうした現場の声を積極的に改善に結びつけよう、という姿勢で行われるわけです。
改善というと、経営コンサルタントなどを思い浮かべますが、その場合、外からの提案や職場への指示はいわば経営者からのトップダウンになります。
一方で、QCサークルによる活動は、内からの提案、つまり現場からのボトムアップです。
トップダウン式が「やらされている感」を現場にもたらしがちなのに比べて、QC活動では自らが改善の担い手になるので、モチベーションアップや、日々改善を考えることによる本人の仕事の知識やスキルの向上といったメリットがあります。
日本企業ではQCサークルが大きな効果を上げました。日本企業の得意とする「カイゼン」の考え方も、QCサークルと密接に絡み合っています。
しかし、QC活動もうまくいくばかりとは限りません。始めたものの良い結果を出せずに行き詰まってしまうQC活動も少なくないのです。
まず製造工程の複雑化が進み、ひとつの課題に多くの部署が関わっていることが多いために、部署単位では全社的な視点に欠け、なかなか改善策が見い出せないことも増えています。
ここにAという部署のBさんという技術者がいるとします。BさんはA部署の課題は見つけることができても、C部署やD部署のことは分かりません。するとBさんはA部署のことだけに目が行きがちになり、まさに「木を見て森を見ず」の状態になってしまうのです。
また製品の市場における寿命も短くなってきました。仕事を通してのQCサークルによる活動は当然ながら時間がかかります。職場で改善策を考えている間に、その製品の生産そのものが終わってしまう、ということも珍しくありません。
そして最大の問題は、内からの改善は根本的な解決に結びつきにくい点です。
人間、組織の中に長くいると、どうしてもそこでの価値観やルールにとらわれがちです。仕事に通じたベテランほど、経験や固定観念に縛られて良いアイデアを出せない、ひどいときは若手の良いアイデアを排除してしまう、そんなことが起こるのははこのためです。
企業でQC活動を成功させるには、どれだけ柔軟で自由な提案ができる環境づくりをするかにかかっています。
アメリカでは、製造現場中心のQC活動をさらに設計やマーケティング、営業、アフタサービスなどに広げたTQC(Total Quality Control)が現れ、さらに経営戦略を現場単位の品質や顧客満足度の目標にまで落とし込んで全社で取り組むTQM(Total Quality Management)へと進化していきました。
TQMは製造業に限らず、サービス業など幅広い分野で活用されています。
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