アメリカ企業のニュースなどでよく見かける肩書き「CEO」。日本でも公的にCEOと名乗ったり、名刺に「CEO」と印刷している経営者も増えてきました。
しかし実をいうと、この「CEO」、法的に根拠のある呼び名ではなく、「好みでそう名乗っているだけ」というのが本当なのです。
「そんなこと知ってるよ。日本では『社長』が正しい呼び方だろう?」
と思われるかもしれません。
しかし、実は「社長」「会長」「専務」「常務」も同じ「自称」にすぎません。この地位が法律で定められているわけではないのです。今回のタイトル中で法的に根拠がある用語は「代表取締役」だけです。
さて、まずCEOについて簡単に説明しましょう。
CEO(chief executive officer)は「最高経営責任者」ともいいます。おもにアメリカ企業で発達してきました。
日本と違ってオーナー(株主)と経営陣がはっきり分かれているアメリカ型経営では、CEOをトップとする執行役員が、株主の代理人からなる「取締役会」から信任されて経営権を任されて業務を行っているわけです。その点、取締役の担う役割は、従来の日本型経営とやや違います。
CEOは経営に関して大きな権限を持ちますが、成果を上げられないなどの理由で、取締役会から解任されることもあります。
ほかにもCOO(chief operating officer/最高執行責任者)、CFO(chief financial officer/最高財務責任者)、CIO(chief information officer/最高情報責任者)といった執行役員があります。
チェアマン(chairman)、プレジデント(president)は「会長」「社長」と訳されますが、CEOやCOOとはまた違う役職です。会長や社長がCEOを兼ねるケースもあります。
一方、日本の会社法では、会社のトップとして代表するのは、「代表取締役」になります。代表取締役は1人とは限らず何人いてもよく、社長や会長が務めることが多いですが、ときには常務や専務でも務めることもあります。
代表取締役とCEOは、似てはいますが意味が微妙に違っています。また会長がCEOを、社長がCOOという肩書きを持つこともありますが、これも企業ごとのルールによったものです。
「創業家一族=経営者」の意識が強かった日本では、大手企業でさえこれまであまり定着してこなかった制度でした。
しかし、近年、日本の企業社会でもアメリカ型企業経営に近い環境が整ってきています。
2003年には商法について改正法が施行されて、「委員会設置会社」では、取締役とは切り離された「執行役」や「代表執行役」が置かれることになりました。これはCEOやCOOとほぼ役割が重なります。つまり呼び名だけでなく、日本でもアメリカ型企業経営ができるようになったわけです。
また、大株主が創業家出身の社長を解任してすげ替えたり、買収合併により経営陣が様変わりするケースも増えてきました。
こうした社会環境の変化によって、CEOやCOOのシステムが日本でも浸透していくかもしれません。
ただし、アメリカ型経営にもデメリットはあります。CEOやCOOは「経営請負人」に過ぎないため、「短期間で成果が出せなければすぐクビになり、長期にわたるプロジェクトや改革に取り組みにくい」「数字ばかり追って見せかけの業績づくりや会社の体力を弱めるリストラに走りがち」「会社よりも自らの利益を優先しがち」といった点です。
アメリカ型経営がすべてそうなるわけではありませんが、そのような例も少なくありません。つまりアメリカ型をそのまま導入すれば必ず成功できるわけではないのです。
日本企業で「CEO」「COO」などの肩書きを見たときには、それがポーズだけのものなのか、それとも本気でアメリカ型経営を導入しようとしているのか、それがその会社にとって本当に効果的なのかを、少し考えてみましょう。
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