MBAとは「Master of Business Administration」の略で、日本語でいうと、「経営学修士」のことです。
「ああ、それなら経営学科に行ったからオレは持ってるよ」と早合点しないように。日本の経営学の学位と、MBAは違います。
アメリカ生まれのMBAにおいて学ぶのは、実践力を重視した企業経営教育プログラムです。ファイナンス、マーケティング、会計、組織、経済、統計、戦略など、状況分析や経営における判断力を養うため、事例をもとに討論するケースメソッドを重視しています。チームを組んで討論するやりかたは、一方的な講義よりもビジネスコミュニケーションの能力や実践的な思考が身につくといわれています。
アメリカでは、MBAを取得することが経営者や企業幹部への登竜門となっており、ビジネスの世界でMBAを取得するのは大前提とされています。
じつはかつてバブル期頃に、日本でもMBAがブームになりかけたこともありました。当時の日本の経済がアメリカ型経営思考をあまり必要としなかったこともあって実利が少なく、一部を除いてはあまり浸透しませんでした。
しかし、外資系の進出や世界市場を見据えた経営戦略の必要性、さらに一般企業でも海外との接点が多くなるなど、アメリカに代表される「グローバルスタンダード」は、日本にも欠かせないという考え方が広がってきました。今のMBAブームにはそのような背景があります。
さて、ではMBAを取得するとどれだけ有利になるのでしょうか?
まずMBA取得には次の方法があります。
最も評価が高いといわれているのが、ハーバート、プリンストン、MIT(マサチューセッツ工科大学)などのトップ校です。入校も卒業も非常に難度の高いコースですが、最も高い評価を得ており、就職の「武器」としても非常に有利です。
もちろんアメリカ国内の学校ですから、留学することになります。企業派遣をしてくれる場合もありますが、昨今ではよほど長期育成プランのある「面倒見のいい」企業しか実施しておらず、多くは自費となるでしょう。ちなみにMBA取得のため2年通うとすると、現地での生活費も含めて、数千万円はかかるのではないでしょうか。
くわえて、トップ校の日本人枠は変わらず、受験者数が増えている状況です。また過剰なまでのMBAブームといわれる中国などアジアの国々の学生に枠をとられ、日本人がトップ校に入るのはますます難関となってきています。
次に、米国トップ校以外でMBAを取得する方法です。世界には大学やビジネススクールの設ける多彩なMBAプログラムがあります。やはり留学という形になりますが、難関のトップ校にくらべれば取得は容易です。
ただしその分、取得している人も多く、企業からの評価はその分下がります。たとえば、日本に進出している一流どころの外資系金融やコンサルティング会社に入社するのはちょっと難しくなるでしょう。
つまり海外でMBAを取ったからといって、必ず評価されるわけではないのです。トップ校以外のMBAの場合は、現場の経験や知識などのキャリアがあれば有利となるでしょう。
MBAというと、転職先には外資金融やコンサルティング会社が思い浮かびますが、今は海外進出した日本企業や、外資の傘下に入った企業などにもMBA取得者のニーズが広がっています。
ただし、MBA取得が給与の大幅アップに直結するアメリカや欧州と比べると、日本ではMBA取得への評価は充分な企業ばかりではありません。コストパフォーマンスも考えると、「MBAを正当に評価してくれる企業」への就職を目指すことが必要です。
さて、留学は資金や時間や語学のハードルもあり、実際の会社員には大変です。
そこで国内でMBAを取得できる方法を見てみましょう。
MBAブームを受けて、今、日本国内の大学やビジネススクールでもMBAプログラムがとても増えています。いわゆる「国内MBA」といわれるものです。最近では都心部にビジネスパーソンの通いやすいサテライト教室を開設する大学も多くなっています。
ただし承知しておきたいのは、国内MBAは、海外系のMBAと同等ではないことです。
MBAにはその学校を評価する団体(「AACSB」など)があり、MBAのブランド力はその認定にかなり左右されています。そして日本国内でAACSBの認可を受けているのは、今のところ慶応義塾大学経営管理研究科と名古屋商科大学・大学院ビジネスプログラム、テンプル大学ジャパンキャンパスだけです。
その他の国内MBAは、あくまで文部科学省認定のもので、また授業の内容も日本の企業社会に合わせたものとなっており、海外での認知度も高くありません。これを武器に外資系などに挑戦するのは絶対無理とはいいませんが、なかなか難しいでしょう。
そのため国内MBAを取得する場合は、「箔付け」というよりも実践的なビジネススキルや人脈づくりを目的とする人が多いようです。実際にも多くの人が身につけたスキルや人脈を仕事に活用したり、転職に役立てています。
また数は多くありませんが、海外の大学と提携している機関のeラーニングなどを使い、日本で働きながら海外MBAを取得する方法もあります。
いずれにしても、MBA取得には多くの時間とお金がかかります。「取得すればなんとかなるだろう」とばく然と受けるのではなく、しっかりとその後のキャリアを見すえて挑戦しましょう。
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