OEMとは「オーイーエム」と読み、「Original Equipment Manufacturing」の頭文字が元になっています。
OEM供給とは、他社ブランドとして販売される製品を製造することを言います。たとえばA社が開発・製造した製品を、B社が自社のブランド名で販売することです。
これだけだと、「下請け」とどう違うんだ、と思われるかもしれません。
例を挙げましょう。日産自動車の発売した軽自動車「クリッパーリオ」です。この車は三菱自動車の開発した「タウンボックス」をベースにデザインを改良したものです。
基本的にOEMはこのような形であると考えてよいでしょう。
液晶テレビなども各メーカーが全部を自製しているわけでありません。液晶パネルの多くは他メーカーの開発品のOEM供給です。
OEMと下請けの大きな違いは、製造元と供給先の関係にあります。
A社が企画開発・生産した製品を、OEM供給してB社が自社ブランドで販売するケースでは、A社も別のブランド名で同じ製品を販売しても構いません。両社の関係は対等なのです。
ただしここまでのOEMについての説明はあくまでも「日本では」という前提の話です。その理由については最後に説明します。
自動車、機械、IT、アパレル、食品などさまざまな業界でOEMはさかんに行われています。OEMなしで産業はもはや成り立たないともいえるでしょう。
なぜOEMがこれだけ増えてきたのでしょうか?
ひとつには新製品のサイクルが異常なほど早くなってきたことがあります。開発コストの回収が難しくなっているのです。
OEMを活用すれば、開発・生産コストをかけることなく自社ブランドの名で新製品を市場に打ち出すことができます。たとえば自社の苦手な分野でもその分野に強い企業からOEM供給してもらえば、商品ラインアップを充実させることができるわけです。
OEM供給する側にもメリットがあります。供給先に製品を「売る」ことになるのですから、製品の売上げが伸びます。それだけでなく相手先の販売網も間接的に販路を拡大することになるのです。
同業種のライバル同士がOEMで協力し合うのはそのような背景があります。
また、自社のブランド力や販売力が充分でない中小企業や新規参入企業が、大手企業にOEM供給して売上げ拡大をはかるケースもあります。スーパーやコンビニなど流通業界、アパレル業界で増えているPB(プライベートブランド)商品などがそれに当たります。
両社が互いの足りない面を補い合うOEMもあります。東京に工場を持つC社と、名古屋に工場を持つD社が互いの製品をOEM供給し合うことで、C社は名古屋で、D社は東京で販売の際に、納期短縮・物流コスト削減・販路拡大が期待できるのです。
さて、前半で「日本では」と断りを入れましたが、OEMという言葉、使い方に気をつける必要があります。
理由は、OEMと関連して語られる、ODM(Original design manufacturer)という用語です。
日本ではなんでもOEMと呼んでしまっていますが、海外ではODMとOEMは使い分けられています。
ODMとOEMを使い分ける場合、OEMでは委託する側が設計開発・技術指導も行い、製造生産プロセスを任せます。主導権は委託側にあり、下請けに近くなります。
一方、ODMでは委託された側が設計・開発・製造まで行い、供給はもちろん自らも販売します。上の日産と三菱や液晶パネルの事例は実はこちらに含まれるのです。
つまり日本でOEMといわれているケースの多くは、実はODMなのです。
アジアを含めた海外企業と関わる場合、この用語の使い方には少し注意が必要でしょう。
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