「F1層、M1層」。もともとテレビ・広告の世界で始まった業界用語でしたが、ここ最近、「F1層に受ける商品開発を」など一般にも浸透してきました。
これらは最初、テレビの視聴率をはかる基準として使われました。F1層のFはfemale(女性)、M1層のMはmale(男性)を示しています。分け方は次のようになっています。
C=4〜12歳
T=13〜19歳
F1=女20〜34歳
F2=女35〜49歳
F3=女50歳〜
M1=男20〜34歳
M2=男35〜49歳
M3=男50歳〜
Cはchidlen(子ども)、Tはteens(10代)のことです。
これらの中で最も重視されてきたのが、20代から30代前半の女性、すなわち「F1層」です。
テレビ番組や映画の製作をはじめ、広告、商品開発、マーケティング、販促まで、さまざまなビジネスがF1層を意識して行われてきました。
若い女性が最も購買意欲も旺盛で、使えるお金もたくさん持っている、と思われたからです。
一方、最も軽んじられてきたのが、M3層、50代以上の男性で、いわゆる中高年・熟年、といわれてきた世代です。この年齢層の男性は情報に疎く、購買意欲も薄く、購買層として期待できないとしてマーケティングの世界ではほとんど無視されてきました。
このF1・M1といったとらえ方は、テレビ中心に発達してきたものです。ネット媒体の世界では、10代を13〜15歳、16歳〜19歳に分けたり、F1層も3つに分割するなど、さらにこまかなカテゴリー分けがされています。
これまでの日本のマーケティングは、「F1層に働きかけろ」の一点張りでした。
ところがこのF1層至上主義に激変が起こりつつあります。
たとえばテレビです。それまでF1層を意識して作られてきた番組が視聴率をとれなくなってきたのです。
F1層がテレビを見なくなり、視聴者の中心がF2層に移ってきたからだともいわれています。
また若い世代がモノを買わなくなってきています。この年齢層にフリーターや派遣社員が増えて経済的に余裕がなくなったのも大きな原因です。
それだけではありません。「自動車が若者に売れなくなった」といわれるようになっていますが、先頃行われた若者への調査でも「経済的に余裕がないから」という回答と並んで、「車に興味がない」という人が増えていることが分かります。
男女ともに若者世代が経済力・意欲とも購買層としてあてにならなくなってきているのです。
その一方で、F2層の年齢になった以前のF1層が、相変わらず高い購買力を保っています。さらに消費の嗜好も細分化し、大雑把な分け方では市場をはかれなくなってきています。
また今後、資金力のある団塊世代のリタイヤで、今まで「50歳以上」とひとまとめに考えられてきた熟年層へのマーケティングが重要になってきます。
わずかの期間で嗜好がどんどん変わっていく10代、その“財布”となる母親世代に対しても、まったく新しい分類が必要になってくるでしょう。
ほとんどのマスメディアや企業も、まだこの新しい動きに対応し切れていないのが現状です。
固定概念にとらわれず、眠れる需要を掘り起こして積極的に働きかけることが、大きなビジネスチャンスにもなりうるのです。
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