業界リサーチ2018

進むイノベーション。追随するか、脱落するか。

インテリジェンス関連 IT/情報・メディア/金融

TI

中部のIT分野は、
モノづくりとの関わりが密接。

実は東海エリアのIT業界は製造業と深い関わりを持つ。製造業では、モノをつくるために産業用機械が必ず用いられる。しかし、それは手動ではなく、ソフトウェアによって動作が制御されている。その手順を考え、求められる成果を出すためのプログラミングを行うのがシステムエンジニアと呼ばれる技術者たちだ。今や会社の売上、顧客情報、在庫などもシステムで管理されている。これら業務系のシステムをつくるのもシステムエンジニアの領域だ。制御系・業務系システムエンジニアは、一般ユーザーが目にするものをつくっているわけではないが、このエリアの製造業を縁の下で支える重要な役を担っていると言っていい。IT技術の需要は衰えることがなく、むしろ業務の効率化をさらに推進すべく、システムエンジニアの存在価値は高まっている。

今後は自動車とITのさらなる融合によるスマートカーの開発や、それに付随する各IT製品・サービスの開発の加速化が予想されるのがこのエリアでのITトレンド。また、トヨタはAI(人工知能)の研究を行う拠点を2016年1月に始動させた。「事故を起こさないクルマ」をつくるため、自動運転の開発に力を入れる構えだ。さらに、IoT(インターネット・オブ・シングス)の概念が車両本体だけでなく、自動車販売店や自動車をつくる生産工場などにも導入されれば、未来的な世界の実現に近づくなど、夢も描ける。

業界リサーチは入念に。人気アプリの開発会社も名古屋で活動。

インターネットサービスの提供やアプリ・ゲーム開発に取り組むのもIT企業。多くは東京に集中しており、東海エリアでは数が限られている。とはいえ、名古屋にもアプリランキングで上位に食い込む作品をリリースしている企業があり、テレビCMを目にしたことがあるはずだ。また、岐阜県にもアプリに加え、据え置き機のゲーム開発で奮闘している企業もある。

WEB制作もIT業界の業務領域。これについては制作会社が東京だけでなく、名古屋圏にも集まっている。そのほとんどは中小企業だが、大手企業のホームページやプロモーションサイトの制作を請け負っている会社は多い。やはりモノづくりとの関係性が深く、各メーカーのサイト制作を受注すべく、広告代理店や印刷会社などとの連携を強化する動きも見られる。

情報・メディア

ネットの台頭による4マスメディアの苦戦。

テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、広告、WEBなどの情報媒体は、依然として東京からの発信が圧倒的。ローカル局や地方出版社などは、名古屋という大都市においても母数が少ない。

4マスと呼ばれていたテレビ、ラジオ、新聞、雑誌は、インターネットの普及によって、さらに苦戦を強いられ続けている。今はニュースなどの情報もスマホで手軽に知ることができるので、テレビや新聞・雑誌離れはますます加速していくだろう。ドラマやバラエティ番組も録画や動画配信サービスの普及によって、リアルタイムの視聴者が減っている。広告収入は激減したわけではないが、栄華を極めた時代に比べると、やはり縮小傾向にある。出版は、紙媒体が衰退の一途をたどり、不況の出口が見えない。電子書籍はコミック部門での健闘が見られる。このように、大手ですら苦戦が続く状況なので、規模の小さいローカルメディアは、厳しい戦いに挑まねばならない。

より地元の「知りたい!」「知るべき!」に着眼した有益な情報提供が求められる。一方で、広告はネットでの露出が目立ち、媒体への出稿をはじめ、サイトを立ち上げPRするなど、勢いは止まらない。

金融

攻めの姿勢が求められる地方銀行。
押し寄せる再編の余波を懸念。

金融には、信用金庫・信用組合、証券、保険、生保・損保、クレジット、ローン、JAバンクやゆうちょなど、多彩な業務形態・領域があり、想像以上に幅が広い。

地元密着型の金融業務を行う地方銀行や信用金庫などは、限られた商圏でビジネスを展開してきたが、岐阜・三重県の有力行が愛知県に支店を新設するなど、かつての商圏を飛び越え、攻めに転じている。これは2013年4月に始まった異次元緩和策や2016年2月に導入されたマイナス金利といった新政策の導入によって影響を受け始めたためで、都市部に活路を見出した結果だ。

実はマイナス金利導入の影響から、大多数の地方銀行が、2017年度3月期の決算の減益をすでに見込んでおり、東海エリアの地方銀行も軒並み減益が予想される。体力勝負のステージに突入したと言えることから、関東や九州の地方銀行は、経営統合の動きが加速。その余波が東海エリアにもやって来ると述べる有識者もいる。

近年は、FinTec(フィンテック)の動向にも注目だ。これは、スマートフォンやビッグデータを活用した新たなIT金融サービスの総称。こうした新サービスをいかに早く企画・導入し、顧客に利便性の高さをPRしてアクションが金融業界では顕著になるだろう。